ドバイの人気ベーカリー・YAMANOTE。エミラティが紡ぐ“日本の味”

Executive Dialogue Vol. 14 YAMANOTE ATELIER創業者 シェイク・スヘイル・アル・マクトゥーム。Gates Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

シェイク・スヘイル・アル・マクトゥーム(YAMANOTE ATELIER 創業者)。ドバイの名門校・Al Mawakeb School Garhoudを卒業後、アメリカン大学ロンドン校にて経営学を学び、2006年に学位取得。その後、ドバイ国際金融センター(DIFC)でキャリアをスタートし、中東・南アジア金融市場の成長に寄与。2009年からは、Thani Investmentsでマネージャーを務め、エネルギー資源や不動産、貿易領域での多角的な投資活動を展開。2013年に、日本の職人技と欧州のベーカリー文化を融合させたベーカリーブランド「YAMANOTE ATELIER」を立ち上げ、中東初の本格的ジャパニーズ・ベーカリーとして注目を集めている。

日本文化の紹介に尽力し、在外公館賞を受賞

ミニマムなデザインとパステルカラーが特徴の内装が、大きな存在感を放っているドバイモール店。土日にもなれば、多くの人で賑わう

永杉:ドバイ在住邦人にとって欠かせない存在のひとつが、日本式ベーカリー「YAMANOTE ATELIER」でしょう。店内の雰囲気、そしてパンの味は日本のパン屋さんそのものですが、こちらを経営するのは、エミラティの方です。今回は、創業者であるシェイク・スヘイル・アル・マクトゥームさんにお話をうかがいます。まず、シェイク・スヘイルさんはドバイの王族の血筋と聞きました。

シェイク・スヘイル:私の曾祖父であるSheikh Butti bin Suhail Al Maktoumは、1906年からドバイの統治を行っていた人物です。

永杉:これまでのビジネスキャリアを教えてください。

シェイク・スヘイル:大学卒業後、金融機関で働き始めました。まずはドバイ国際金融センター(DIFC)に入り、次はマレーシアに渡りスタンダードチャータード銀行でも働きました。その後ドバイに戻り、叔父と一緒に仕事をしたあと、自分でビジネスを立ち上げました。
 妻と始めた「YAMANOTE ATELIER」もその一つですし、他には日本食品を中東に輸出する日本の法人RLAM Tradingの共同創業者・取締役なども務めています。こうした日本関連の事業を続けていたこともあり2024年11月、在ドバイ日本国総領事館より在外公館長賞をいただきました。

永杉:今回は、それら事業の中から「YAMANOTE ATELIER」に絞ってお話をうかがいます。奥様と経営されているというお話ですが、立ち上げに至った経緯を教えてください。

シェイク・スヘイル:妻のハムダは子どもの頃から日本に行くことが多く、日本のケーキやスイーツをいたく気に入っていました。そのうちに、UAEで日本式のケーキを扱うビジネスをしてみたいという夢を持つようになったそうです。それで2007年頃から日本人パティシエと組んで、日本のケーキを扱うビジネスをスタートさせました。 
 当初はデリバリー中心のスモールビジネスだったのですが、顧客からの評判も良く、いよいよ店舗を構えるかという段になったところで、東日本大震災が発生し状況が一変しました。震災の影響で日本の食材が一時的に輸入できなくなり、特に生クリームをドバイに持ってくることができなくなったのです。このことがあり、ケーキショップ事業は一旦ストップとなりました。
 その後、震災の影響が落ち着いてきた頃、また妻とともに日本を訪れました。そこで、各所を視察しているうちに、パン屋の業態のほうがUAEにおける需要が高いのではないかと思うようになったのです。それで、日本人の知り合いに頼んでコンサルタントを紹介してもらい、さらに日本のパン職人の方にもアドバイスをもらいながら開店準備を進めました。そして2013年4月、「YAMANOTE ATELIER」がオープンしたのです。

今年だけですでに3回訪日。日本のトレンドを敏感に察知

永杉:「YAMANOTE ATELIER」は高級感のある良い名前だと思います。ネーミングにはどのような思いを込めたのでしょうか。

シェイク・スヘイル:もちろん「山の手」の意味は知っていますが、決め手となったのは音の響きです。我々の耳で聞くと「YAMANOTE」は、母音の響きがリズミカルで美しく、メロディーのように聞こえるのでとても気に入っています。

永杉:ドバイの1号店がオープンした際には、アブダビ在住のローカルの方が片道140kmをドライブして、YAMANOTEのパンを爆買いしていることが在住邦人の間で話題になっていたそうです。
 そのまま店舗数は順調に増え、現在ではドバイに5店舗、アブダビに2店舗、カタールのドーハにフランチャイズを1店舗構えるまでに成長しました。ドバイにはヨーロッパ系の高級ベーカリーも多く、競争も激しいと思いますが、現在の成功の要因はどこにあると思いますか。

シェイク・スヘイル:品質を一切妥協しないことは、設立時から常に心がけていることです。北海道産の小麦をはじめとして、日本から高品質な原材料を輸入して、職人たちが焼き上げています。訪日時に毎回有名ベーカリーを視察しますが、我々の店のほうが高品質だと思うことさえあり、品質には絶対の自信を持っています。

オーセンティックな日本発の職人技を受け継ぐYamanoteの人気メニュー。クロワッサン、食パンなども人気

永杉:食パンや焼きそばパンなどの定番メニューの他にも、バリエーション豊かな商品がお店には並んでいます。特に人気のメニューはなんでしょうか、また、メニュー開発はどのように行っていますか。

シェイク・スヘイル:日本を感じられるメニューに人気が集まっています。例えばキャラクターをあしらったパンや、日本風のチーズケーキが最近特に人気ですね。新メニューはマーケティング担当、妻、私のチームで選定しています。
 重視しているのは日本のトレンドや季節感を反映させることで、例えば今ならサクラフレーバーの商品を大きく展開しています。トレンドを知るため、頻繁に日本に行くようにしており、今年はもう3回日本に行きました。

永杉:他国の日本式ベーカリーに行くと、客の大半が在住邦人という光景を目にします。ところがYAMANOTEの場合、日本人にも人気なのですが、ローカルの方が非常に多いのが印象的です。

シェイク・スヘイル:設立当初に考えていた以上に地元の人々から支持される結果になりました。多国籍な都市であるドバイの文化に上手く溶け込めたこともこの店の成功の要因でしょう。
 欧州、アジア、中東、インドなどさまざまな文化圏の人がいて、それぞれ味覚がまったく異なりますから、それぞれのニーズを満たすメニューを選定するのは、とても大変な作業ですが、やりがいのある仕事です。

日本への逆輸入で生まれるマネジメントのメリット

永杉:今後のビジョンについて教えてください。

シェイク・スヘイル:現在、フランチャイズでカタールにも展開していますが、より多くの国に店舗を広げたいと考えています。その中でも特に重視しているのが、日本への逆輸入です。
 日本でYAMANOTEをオープンさせることには、店舗運営面で多くのメリットが存在します。例えば、日本人パン職人の採用もスムーズになりますし、他国で採用したスタッフをトレーニングする拠点として日本の店舗を使うこともできます。ドバイと日本の間での人材ローテーションも可能になりますから、日本の店舗を持つことは我々にとっていいことずくめなんです。

閑静なエリアのAl Safaにある店舗が本店。オープンキッチンのように工房が見え、職人のきめ細やかな仕事ぶりがうかがえる

永杉:元々外国の文化だったベーカリーが日本独自の発展を遂げて海をわたり、エミラティの感性を取り入れて再度上陸するというのはとても面白い話です。シェイク・スヘイルさんのように、日本の食文化に造詣の深い方が活発にビジネスをされることは、日本の生産者や飲食業の方にとっても明るい兆しとなるはずです。今後のビジネスの成功を祈っています。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉豊。Gates Media FZCO CEO。UAE・ドバイ在住。UAEのビジネスおよび観光情報に特化したメディアを運営し、バイリンガル月刊情報誌『Gates Dubai』をUAEと日本で発行。オンラインメディアでは日本語・英語・アラビア語の3言語で情報を発信している。「日本人だけが知らない砂漠の経済大国UAE・ドバイ」における日本のプレゼンス向上と、日本国内でのUAE理解促進を目指し、日本、米国、ミャンマーに続き、2023年10月にUAE現地法人を設立。

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