ラス・アル・ハイマ王族が挑む持続可能な養蜂事業とは。ワン・ハイブ 会長 /ラス・アル・ハイマ民間航空局 局長 シェイク・サレム・ビン・スルタン・アル・カシミ殿下 インタビュー

Executive Dialogue Vol. 18 Part1 ワン・ハイブ 会長 /ラス・アル・ハイマ民間航空局 局長 シェイク・サレム・ビン・スルタン・アル・カシミ殿下。Gates Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

ワン・ハイブ 会長 /ラス・アル・ハイマ民間航空局 局長
シェイク・サレム・ビン・スルタン・アル・カシミ殿下
ラス・アル・ハイマ王族。アメリカ・アリゾナ大学で鉱山工学を学んだ後、シャルジャアメリカン大学でMBAを取得。現在はラス・アル・ハイマ民間航空局局長として空港開発や観光振興に携わるほか、養蜂事業ブランド「ハッタ・ハニー」を展開する企業「ワン・ハイブ」を設立し、持続可能な養蜂業の普及を先導している。さらに、アジア・フェンシング連盟の会長として競技発展を牽引するなど、公職と民間事業の双方で幅広く活躍している。

持続可能な養蜂へ挑戦を始めた理由

永杉:今回は、ラス・アル・ハイマ首長国の王族であるシェイク・サレム・ビン・スルタン・アル・カシミ殿下にお話をうかがいます。カシミ殿下はラス・アル・ハイマ民間航空局の局長として空港開発や観光振興に携わるほか、今UAEで注目を集めている養蜂事業「ワン・ハイブ」の運営も行っています。さらにはスポーツ愛好家としても知られ、アジア・フェンシング連盟の会長を務めるなど、公職、民間事業問わず、幅広い分野で精力的な活動をされていることで知られています。
そこで、今回は特別に2回にわたって、カシミ殿下が手がける事業や、ラス・アル・ハイマ首長国の魅力に迫ってみようと思います。前編となる今回は、サスティナブルな取り組みとして政府や企業から注目を集める養蜂事業「ハッタ・ハニー」と「ワン・ハイブ」についてお聞きします。まずは、事業の概要から教えてください。

カシミ殿下:「ハッタ・ハニー」はブランド名です。この名称で天然蜂蜜の製造販売を行うほか、観光施設のハッタ・ハニー・ビー・ガーデンなどを展開しています。一方、「ワン・ハイブ」は運営企業で、ブランド運営のほか教育・研究・社会活動・CSR・商品開発など総合的な養蜂事業を行っています。

永杉:設立は2018年と聞いています。設立のきっかけや、事業開始以前のUAEにおける養蜂について教えてください。

カシミ殿下:私は、UAEにおけるあらゆるビジネスを革新的に発展させたいと考えており、かねてから新しい事業はないかとアンテナを張っていました。そこで目についたのが養蜂事業です。
当時のUAEの養蜂は、私が理想とする水準とは程遠いものでした。例えば、日本の養蜂家は収穫シーズンを終えた後、蜂の群れを越冬させて、また来年同じ群れから蜂蜜を採取することが一般的です。しかし、当時のUAEの養蜂は趣味の延長のようなものに過ぎず、地元の養蜂家が蜂蜜を集めたらそれで終わり。群れを維持する仕組みやノウハウがなかったのです。そこで私は、持続可能性を追求した養蜂事業を行ってみようと思ったのです。最初は小規模な試みとして、「ハッタ・ハニー」を立ち上げ、蜂蜜の生産と女王蜂の育成ステーションを始めました。そして事業が軌道に乗ったため、「ワン・ハイブ」の設立に至りました。

永杉:UAEにおける養蜂の市場はどのようなものだったのでしょうか?

カシミ殿下:養蜂市場で私がもっとも問題視していたのが、偽物や粗悪品の流通です。お店に行けば、UAE産の良質な蜂蜜もありましたが、混ぜものをした粗悪な商品も多く出回っている市場環境でした。「ハッタ・ハニー」は設立当初から、高品質な天然蜂蜜であることを強くアピールし、消費者が信頼できるトレードマークに育てることを重視してきました。

持続可能性を追求し、養蜂事業を開始したカシミ殿下。農場で自ら養蜂も行う

酷暑の中でも育つ強い蜂と多彩な蜂蜜

永杉:生産している蜂蜜について詳しく教えてください。

カシミ殿下:セダー、サマー、ガフ、マングローブ、ワイルドフラワーの5種類の蜂蜜を生産しており、どれもオーガニックの天然蜂蜜。味、香り、色合いなど、すべてがプレミアムな品質に達していると自負しています。他社にはない一番の特徴は、酷暑の中でも生産が可能であるという点。通常、蜂は暑すぎると飛べなくなり、すぐに死んでしまいます。ところが我々は研究と交配を重ねて、暑さに強い女王蜂と働き蜂を飼育することができています。6月でも蜂蜜を生産できるのは、我々の大きな強みと言えるでしょう。

永杉:「ワン・ハイブ」では、蜂蜜生産以外の事業も行っていますね?

カシミ殿下:養蜂に関わるさまざまな取組を行っています。まず挙げるとしたら養蜂家の開業支援です。例えば、シャルジャやラス・アル・ハイマに農場を持っている人が、余剰の土地を活用するために養蜂ビジネスに参入したい場合、我々が蜂蜜の生産からパッケージングまで包括的にサポートをすることができます。
他には、ハッタ・ハニービー・ガーデン&ディスカバリー・センターの運営も重要な事業です。ここでは、蜂蜜の生産過程を見学でき、シーズン中には防護服を着用したうえで抽出作業を間近に見ることもできます。観光客に楽しい体験を提供するだけでなく、我々が一切のごまかしなしでオーガニックな製品を作っているところを見せることができるので、消費者との信頼関係を築ける重要な施設だと考えています。
私もリフレッシュしたいときには蜂の世話をしにいきます。ハッタはドバイ市内から車で1時間半ほどの山岳地帯。自然豊かな素晴らしい場所なので、日本の観光客の方にもぜひ足を運んでもらいたいと思います。

高品質な天然蜂蜜を製造し続けているハッタ・ハニー。防護服を着用し、抽出作業を間近に見ることも可能

自然環境への取り組みで官民からの信頼を勝ち取る

永杉:「ワン・ハイブ」事業は、環境に良い影響を与える取り組みをしているとして、高い注目を集めています。

カシミ殿下:環境保全は、我々が事業を進める上で欠かせない柱の一つです。そのため、CSRとして植樹やリサイクル活動などを積極的に行っています。こうしたことは養蜂業の発展だけでなく、UAEの自然環境改善にもつながるのです。
我々の取り組みはUAE政府が掲げるサスティナビリティ目標とも合致しており、気候変動・環境省などとも連携をしながら事業を進めています。また、企業との協業も進めており、例えば、ドバイ国際空港とは、蜂の保護および自然保護区に関する協働プロジェクトを立ち上げており、広域的な環境保全の推進にも寄与しています。

永杉:UAEは産油国でありながら、エネルギーシフトや産業多角化に積極的に取り組んでいます。高品質な蜂蜜の生産はもちろん、環境保全、さらには観光開発にも寄与する「ワン・ハイブ」の事業は、まさに今後のUAEの進むべき道を示しているのではないでしょうか。この事業には、今後も注目していきたいと思います。(後編に続く)

永杉豊。Gates Media FZCO CEO。UAE・ドバイ在住。UAEのビジネスおよび観光情報に特化したメディアを運営し、バイリンガル月刊情報誌『Gates Dubai』をUAEと日本で発行。オンラインメディアでは日本語・英語・アラビア語の3言語で情報を発信している。「日本人だけが知らない砂漠の経済大国UAE・ドバイ」における日本のプレゼンス向上と、日本国内でのUAE理解促進を目指し、日本、米国、ミャンマーに続き、2023年10月にUAE現地法人を設立。

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