セイコーエプソン・小川恭範取締役会長「中東市場の売上は右肩上がり。プリンター以外の製品注力が課題」

Executive Dialogue Vol. 13 セイコーエプソン株式会社 取締役会長 小川恭範氏。Gates Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

小川恭範(セイコーエプソン株式会社 取締役会長)。1962年愛知県生まれ。東北大学工学部・大学院 工学研究科修士課程を修了後、1988年にセイコーエプソンに入社。VI事業推進部長、VI企画設計部長などを経て、2018年取締役執行役員ビジュアルプロダクツ事業部長兼技術開発本部長に就任。2019年より取締役常務執行役員としてウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントと技術開発本部長を兼務。2020年代表取締役社長に就任し、2025年4月より取締役会長に就任する。

就任後すぐにコロナ禍に。世界中の拠点で赤字転落

最先端の技術を発信するイノベーションセンターをドバイ・プロダクション・シティに開設し、盛大なオープニングセレモニーを開催。式典には、関係者をはじめ、TECOMグループやUAEの要人らが多数出席

永杉:今回は、この4月からセイコーエプソン株式会社の取締役会長に就任された小川恭範さんにお話をうかがいます。小川さんは2020年4月から社長を務められ、任期中にドバイで新しい販売会社Epson Middle East FZCO(以下、EME)を設立されています。まずは中東地域についてお聞きする前に、社長としての5年間を振り返っていただきたいと思いますが、就任とほぼ同時期にコロナ禍に見舞われました。

小川:コロナが20年の2月くらいから次第に騒がれ始め、私は4月に社長に就任しました。就任パーティーなど色々と予定されていましたが、そうしたイベントはすべて中止。そして、すぐに会社の業績にも悪影響が出始めました。

もっともインパクトが大きかったのは、インドです。インドはそれまで非常に好調に事業が推移していた地域だったのですが、コロナで販売網がまったく機能しなくなり、私が就任した4月の売上高がゼロになるという極めて厳しい結果となりました。その他地域についても販売が大きく減少し、全世界で赤字のスタートとなりました。

小川氏がドバイ・プロダクション・シティに開設されたイノベーションセンターの開所式にて、記念のグラフィティウォールに署名

永杉:まさに波乱の船出ですね。回復の兆しはどのようなところから見えてきましたか。

小川:きっかけは中国市場でした。中国では在宅の勤務や教育が他国よりも早く導入されていました。特に在宅の教育が広く浸透していたため、家庭用プリンターの需要が高まったのです。それが回復の兆しで、その後は他国にもその動きが波及していきました。一方、人が集まるところで使われるプロジェクターなどの需要は、かなり長い間低迷を続けていましたね。

永杉:当時、国によってはロックダウンなどで会社や工場がまともに動かず、サプライチェーンの寸断ということも発生しました。

小川:その点で当社は大きな影響はありませんでした。まず、本社機能や開発拠点が長野県にあり、比較的スペースも広かったのでソーシャルディスタンスが取りやすく、半数くらいの社員がコロナ禍でも出勤できたのは大きかったですね。

そして、決して供給を途絶えさせてはいけないプリンターの交換用インクの製造が、世界各地に分散されていたことも有利に働きました。インクは主に東南アジアで作っていましたが、アメリカ、イギリス、中国、そして日本でも作っていますので、どこかの国でロックダウンが起きても他国がカバーすることができたのです。

ドバイの新たな販売拠点が中東・アフリカを広くカバー

永杉:そのようなコロナ禍も落ち着いた2023年8月、ドバイに新たな販売会社EMEを設立され、24年10月から営業を開始しました。このタイミングでドバイに販売会社を設立された背景と狙いを教えてください。

小川:中東エリアは今後大きく伸びるエリアとして注目しており、数年前から設立を検討していました。もともとこのエリアはヨーロッパの販売会社がロシア、アフリカとともに担当していたのですが、やはりこれから伸びる地域ですから、スピーディーな判断のためにも中東に販売会社は必要だろうということで設立に至りました。

ドバイのEMEは中東だけでなく、アフリカ、中央アジア、コーカサス地域、モルドバ、トルコ、ウクライナなども対象地域となっており、より広域での販売を展開するための拠点となっています。

永杉:広域なエリアを任せる販売会社をドバイに置いたのはどのような理由がありますか。

小川:やはりアクセスもいいですし、人種や宗教など多様な人が集まるのがドバイですので、センター機能を持たせる販売会社としては、一番適した土地と考えています。

永杉:中東市場の売上推移はいかがでしょうか。

小川:まさに右肩上がりという印象です。昨年の実績では約400億円の売り上げとなっており、これはアフリカ地域も含んだ数字ですが、大半が中東の数字です。

永杉:中東ではどのような商品が受け入れられているのでしょうか。

小川:好調なのはプリンター、とりわけ大容量のインクタンクモデルが順調に推移しています。プリント機会の多いユーザーにとって、これまでのプリンターはインクカートリッジの頻繁な交換が必要なため使い勝手が悪いというデメリットが存在していたのです。大容量インクタンクモデルはインクカートリッジ交換の手間が少なく、ソーホーなどで重宝されています。

プリンター以外の製品を広く訴求することが課題

永杉:今後の中東地域におけるビジネスで課題があるとしたらどのようなことが挙げられるでしょう。

小川:家庭用・ソーホー用のプリンター以外の製品について、もっと知名度を上げる必要があります。例えば、布地に印刷できる産業用のプリンターが挙げられます。中東やアフリカにはアパレル産業の集積地も多くあるのですが、そこで行われる捺染(布地に模様をプリントする染色法)は環境負荷や労働環境などの課題があると言われているアナログ方式で行われることが多いのです。

当社には、そういった課題に対応しつつ高精細・高品質なデジタル方式の捺染機をラインナップしていますが、まだまだ知名度が低いと感じています。今後は、中東・アフリカ地域でこうした製品の知名度を上げていかなければいけません。知名度アップに寄与するため、今年2月、ドバイ・プロダクション・シティに設立したのが、Middle East Innovation Centreです。

2025年4月1日付けで取締役会長に就任。写真右は新CEOの𠮷田潤吉氏

総面積は1,100平方メートルで、プリンターやビジュアルディスプレイなどの最新技術を発信したり、ワークショップやセミナー開催も予定しています。例えば、アパレル業界の方々が布地を持ってきていただければ、実際に印刷をして仕上がりや質感を試すことができるなどの利用方法を想定しています。実際に足を運んで、製品の性能を見てもらうということに大きな意味がありますから、アクセスの良いドバイで周辺諸国の人々にも訴求して、このエリアのビジネスをもっと伸ばしていきたいです。

永杉:日系企業がドバイをハブとして中東やアフリカ地域を狙う動きが年々増えていることを肌で感じています。新たに進出する企業にとって、同じ日系企業であるセイコーエプソンさんがドバイにあるというのは大きな助けになるはずです。そのためにも、今後ますます中東地域においてご発展されることを期待しております。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉豊。Gates Media FZCO CEO。UAE・ドバイ在住。UAEのビジネスおよび観光情報に特化したメディアを運営し、バイリンガル月刊情報誌『Gates Dubai』をUAEと日本で発行。オンラインメディアでは日本語・英語・アラビア語の3言語で情報を発信している。「日本人だけが知らない砂漠の経済大国UAE・ドバイ」における日本のプレゼンス向上と、日本国内でのUAE理解促進を目指し、日本、米国、ミャンマーに続き、2023年10月にUAE現地法人を設立。

Gates Dubaiの広告
ドバイでビジネスを拡大!

日本でもビジネスを周知

お問い合わせ







    ご用件必須

    お名前必須

    会社名

    ウェブサイトURL

    ご住所

    電話番号

    メールアドレス必須

    サイトを知ったきっかけ

    お問合せ内容必須

    プライバシーポリシーに同意する
    ※IPアドレスを記録させていただきます
    ※お問い合わせいただいた方には、ドバイの最新ニュースメール(無料)をお届けします(解約自由)