UAE旅行代理店の未来とは?デジタル時代に求められる“サービスの価値”

Executive Dialogue Vol. 15 Al Rais Travel & Shipping エクゼクティブ・ディレクター モハメド・ジャシム・アル・ライス。Gates Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

Al Rais Travel & Shipping エクゼクティブ・ディレクター モハメド・ジャシム・アル・ライス。2006年シャルジャ・アメリカン大学卒業。2002年に経営者育成プログラムを通じてAl Rais Groupに加わり、2008年よりAl Rais Holidaysやレンタカー事業などでリーダーシップを発揮。現在はAl Rais Travel & Shippingのエグゼクティブディレクターとしてグループ全体の成長戦略を主導する。また、ドバイ旅行業協会(DTTAG)の名誉会長などの要職も多数務めている。

ネット以前の旅行代理店はまるでクリニックのよう

永杉:今回は、UAE有数の旅行関連企業Al Rais Travel & Shippingのエクゼクティブ・ディレクター、モハメド・ジャシム・アル・ライスさんにお話をうかがいます。まず、会社についてお聞きします。UAEにはさまざまな事業を手掛けるコングロマリット「Al Rais Group」がありますが、こちらと御社の関係について教えてください。

モハメド:「Al Rais Group」は、我々一族が所有するグループ企業で、レンタカー、不動産、ラストマイル配送、そしてIT関連企業などを展開しています。一方、「Al Rais Travel & Shipping」は、一族とパートナーが共同経営するグループ企業で、旅行代理店業に加えて、物流、貨物、海運などを手掛けています。私はこちらでエグゼクティブディレクターを務めています。

永杉:今回は、後者の「Al Rais Travel &Shipping」、とりわけ旅行ビジネスに焦点を当ててお話を聞いていこうと思います。まずは、創業時のことから教えてください。

モハメド:創業は1977年ですので、私が生まれる前の話です。父とジャシム氏、パートナーのアブドゥルラフマン氏が共同で出資し、事業を開始しました。

永杉:もうじき創業から半世紀ですか。今から50年前だと現在とは違った経営の苦労があったでしょうね。

モハメド:当時の苦労は父やジャシム氏、アブドゥルラフマン氏からよく聞いています。その頃のUAEは当然インターネットがなく、旅行に関するほかの情報源も乏しかったそうです。そのため、UAEの人々が旅行に行きたいと思っても、そもそもどこに行けばいいのかすらわからない。そこで人々は旅行代理店に来て、まるでクリニックのように「どこに行けばいいか、何をすればいいか」を求め、訪ねていたのです。
 そのような営業形態だったため、スタッフには極めて高いスキルが求められました。そのスキルとは、単にホテルや航空券を手配することだけではありません。各地域の情報に精通し、顧客の要望に対し適切な訪問先や楽しみ方などを提案できる能力を持っていなければならないのです。そうした人材を探すのに酷く苦労したと、父とジャシム氏は言っています。例えば、ロンドンで開催されているWorld Travel Marketなどの展示会に行き、優秀な人材を見つけてスカウトするなどして人材を確保していたそうです。

世界各地のパートナーが細やかなサービスを提供

GCC初のディープテック・ユニコーン企業AHOYと、Al Rais Travelが戦略的提携を発表。AIや自動化を活用し、旅行体験の向上と年間1万時間以上の工数削減を目指す

永杉:それからおよそ50年が経ち、旅行手配のシステムも様変わりしましたか?

モハメド:はい。しかし、我々は今でも創業当時の理念を引き継いでいると考えています。当社の社是は“Raise the Standard(基準を引き上げる)”です。つまり、単純にホテルや航空券の予約を代行するのではなく、現地におけるさまざまな付加価値を当社のスタッフを通じて顧客に提案することを重視しています。例えば、保険の提供、現地での移動方法、レストランの予約など、顧客が期待する以上のものを各スタッフが提案・サポートする。それが我々の“おもてなし”です。
 経営者として先々のビジョンを考えたとき、やはりIT・AI・DXなどの言葉は無視できません。もちろん、必要なものは取り入れていきますが、人と人との直接のコミュニケーションを大切にする創業当初のビジネススタイルを崩したくはないと考えています。

Al Rais TravelがITA航空のUAEにおける独占販売代理店に。UAEとイタリア間の観光やビジネスの新たな架け橋として、Arabian Travel Market 2025でパートナーシップの強化をアピールした。

永杉:デジタル化一辺倒の世の中で、そうした考えは非常に価値があると思います。顧客に細やかなサポートを提供するために、御社はどのような取り組みをしていますか?

モハメド:まずは、UAE国内に優秀なスタッフを取り揃えることはもちろんです。現在、国内スタッフは総勢400名を数えています。一方、渡航先でも顧客をしっかりとサポートしなければいけません。そこで我々は、世界各地の主要な都市にパートナーを作り、ゲストが現地に赴いた際に万全のサポートができる体制を整えています。渡航する目的はレジャーだけでなく、ビジネストリップ、MICE(企業イベントや会議)などさまざまですから、それぞれの分野に強いパートナーを満遍なく選出しています。もちろん、日本にもパートナー企業があり、東京や大阪など複数の都市で我々の顧客をサポートしてくれています。

永杉:創業当時の“クリニック”のように顧客に寄り添うスタイルが、今や海外でも行われているわけですね。確かにそれは、デジタルでは難しい部分だと思います。

注目すべき旅行先はルワンダ。国民が連帯する現在の姿とは

永杉:モハメドさんは旅行業界で15年ほど活躍されており、頻繁に世界各国を巡られていると聞いています。そこでお聞きしたいのですが、UAEから比較的アクセスのよい外国で、今おすすめのスポットはありますか?

モハメド:私はこれまでに100ヵ国以上を訪問しましたが、近年、私が特に注目している訪問先はアフリカのルワンダです。ご存知のとおり、あの国では今からたった30年ほど前に虐殺が発生し、多くの人命が失われました。しかし、今はとても安全かつ清潔な国です。私も4回訪問しましたが、危険な体験をしたことはありません。
ルワンダで特に素晴らしいと感じるのは、「ウムガンダ」です。これは、毎月最終土曜日に国民全員が参加する奉仕活動で、道路を掃除したり、建物の修繕を行ったりするものです。旅行者でも参加可能で、私も地域の人達と一緒に、住宅の手入れなどを行いました。
パーティのように楽しむ旅行も決して悪くはありません。しかし、私は旅に学びがあってほしいと思っています。訪れる国によりさまざまな学びを得ることができますが、つらい記憶を抱えながらも国民が連帯して奉仕活動を行うルワンダの姿から考えさせられることはとても多かったです。ぜひ、皆さんにも訪問してほしいですね。

マジュリス(友人や家族、地域の人々が集まり、歓談し、情報交換をするアラブ文化における社交イベント)にて、モハメド・ジャシム兄弟と永杉

永杉:ルワンダというとジェノサイドのイメージが強かったので、そのような活動があるという話は大変興味深いです。多くの日本人にとってアフリカ大陸は馴染のない土地ですし、日本から直接ルワンダへ行こうとすると非常に大変です。しかし、UAEからなら直行便も出ていますから、ドバイ観光を楽しみつつ、ドバイをハブとしてルワンダ旅行も楽しむというスタイルもいいかもしれませんね。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉豊。Gates Media FZCO CEO。UAE・ドバイ在住。UAEのビジネスおよび観光情報に特化したメディアを運営し、バイリンガル月刊情報誌『Gates Dubai』をUAEと日本で発行。オンラインメディアでは日本語・英語・アラビア語の3言語で情報を発信している。「日本人だけが知らない砂漠の経済大国UAE・ドバイ」における日本のプレゼンス向上と、日本国内でのUAE理解促進を目指し、日本、米国、ミャンマーに続き、2023年10月にUAE現地法人を設立。

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