体感温度50℃⁉︎ ドバイの猛暑対策〜灼熱の夏をスマートに過ごす

真夏の体感温度は50℃近い灼熱のドバイ。過酷な夏の本格的な到来前に、私たちはどのような準備ができるのか?
本特集では、ドバイがこれほどまでに暑くなる理由から砂漠で育まれてきた文化・風習、アラブ建築に宿る“涼の知恵”、現地在住の医師によるアドバイスやドバイで手に入る暑さ対策グッズなどを紹介。
暑さとどう共に生きるかーーその答えは、ドバイの街と人々のなかにある。
なぜUAEはこんなにも暑いのか?

50℃近い体感温度、湿度90%超え――ドバイをはじめとするUAEの夏は、常識を超える過酷さをもたらす。だが、その原因は「砂漠だから」だけでは片づけられない。
ドバイの気温はどれくらい?気象・地理・都市から読み解く灼熱の理由
アラブ首長国連邦(UAE)は、毎年5月から9月にかけて日中の気温が40℃に達し、湿度も60〜90%に及ぶ過酷な暑さに見舞われる。この極端な気候は単なる「砂漠だから」では説明しきれない。実際には、地理的位置、大気循環、都市構造、そして人為的要因が複雑に絡み合っている。

まずは、UAEは北回帰線付近の亜熱帯高圧帯(サブトロピカル・ハイ)に位置する。この高気圧帯は下降気流を伴うため、雲の発生を抑え、日照時間が長くなる。結果として、日中の太陽放射が地表に強く届き、地面を加熱。この熱は乾燥した大気中で逃げにくく、地表近くに蓄積される。
次には、UAEの地形と周囲の水域。西側に広がるアラビア砂漠と、東側のオマーン湾やペルシャ湾(アラビア湾)という乾燥帯と海洋の組み合わせが、独特の気象パターンを生んでいる。特に夏季には、海面水温が上昇し、沿岸部で高温多湿の海風(シャマール)が内陸部へと吹き込み、気温だけでなく湿度も急上昇し、体感温度は50℃を超えることもある。
「熱を生む都市」から「熱と共に生きる都市」へ

都市化によるヒートアイランド現象も無視できない。ドバイやアブダビといった都市部では、アスファルトやコンクリートに覆われた地表が昼間に大量の熱を吸収し、夜間も放出しきれない。加えて、高層ビルの密集による風通しの悪化、冷房排熱の放出、車両交通による廃熱などが複合的に影響する。
気候変動の影響も表面化している。UAE政府の気候変動・環境省によれば、2040年までに年間平均気温が約1.5〜2℃上昇し、過酷な暑さが常態化する可能性が高いという。これに対し、ディストリクトクーリング(地域冷房)や緑化、日陰をつくる都市設計、サステナブル建築の導入などが進められている。
UAEの暑さは単なる“自然現象”ではなく、地理と大気の物理法則、人間の都市活動、そして地球環境の変化が交錯した「現代的な気候課題」。その中で人間は、アラブの伝統と最先端の工学的アプローチを融合させながら、新たな「灼熱との共存モデル」を模索している。
UAE育ちが語る灼熱生活との共存
気温40度を超える日が続くUAEの夏。日本人の感覚では「外に出るのは命がけ」とさえ感じるこの過酷な環境を、UAEに生まれ育ったファトマさんは、実に自然体で生き抜いている。彼女が語る日常には、猛暑と共に生きるための知見が根付いていた。


黒が涼しい。ドバイの“逆説的”涼しさ

大前提としてあるのが、「強い日差しの時間帯は極力外に出ない」ということ。これは“工夫”というより“常識”。バスを待つときでさえ、屋外で待つことはせず、近くの日陰で涼をとる。
体の内側からの“温度管理”に対する考え方も日本とは違う。日本では暑い日には冷たい水やアイスコーヒーで体を冷やすのが一般的だが、彼女は逆。家庭では、暑い時期でも熱いお茶を飲み、「冷たい水を飲むと、体の内側が冷えすぎて、外に出たときに余計に暑さを感じる」から。朝はホットのアラビックコーヒーを飲み、日中や食後には紅茶を口にする。そもそも、生まれてこのかた、飲み物に氷を入れる習慣はなかったという。
食べ物にも、暑さとの向き合い方がある。スイカやブドウといった水分を多く含む果物を積極的に摂るのは、単なる嗜好ではなく、体に無理をさせずに水分を補給する生活の知恵。幼い頃から、母親が夏になるとこうしたフルーツを用意してくれるのが日常だった。
服装にも独自の文化がある。アラブの女性たちがまとう黒いアバヤ(伝統衣装)は、一見すると暑そうだが、実は通気性が良く、風を通しやすい素材が使われているため、意外にも涼しい。加えて「すぐに着られる」といった利便性も高く、生活の中に溶け込んでいる。
抗わず、受け入れる。UAEに息づく暑さとの共存

印象的だったのは「慣れ」という言葉。生まれたときからこの環境にいる彼女にとって、暑さは“避けるもの”ではなく“共にあるもの”。ラマダンの時期が夏と重なる年もあるが、食事内容を塩分控えめにしたり、水分が出すぎないよう配慮することで乗り切る。ラマダン中、彼女は「体が重くならないよう、軽めに済ませている」と話し、結果的に健康的で快適な生活につながっているという。
シャワーも一日3回は日常的。朝、外出前、帰宅後と、水を浴びることでリセットし、整える。UAEのように水資源が比較的豊かな環境だからこそ成り立つ習慣でもあるが、暑さと共にある暮らしに欠かせないリズムのひとつでもある。
建築にもその知恵は息づいている。かつて、アラブの家は土でできており、直射日光を防ぎながら風が通る設計になっていた。住宅同士が密集することで“日陰”を生み出し、自然と涼しさを確保している。現代では、エアコンの効きも効率的であり、ドバイの住宅が「家の中は涼しい」と感じるのは、こうした知恵と現代技術の融合によるもの。
そして彼女は言う。「暑さをネガティブに捉えると、もっと辛くなる。でも、太陽のおかげで作物が育つし、乾燥地帯は土壌が薄く、地層が見つけやすい(=石油が採掘しやすい)環境。この国の豊かさは、暑さの恵みでもあるんです」。暑さに抗うのではなく、受け入れ、感謝し、知恵と共に生きる。UAEで暮らすということは、そんな哲学とともにあるのだ。
ドバイで買える! “アジア発”猛暑対策グッズ
灼熱のドバイで快適に過ごすために、頼れるのは実用性を備えたグッズ。DAISO、MUMUSO、MINISOの3ブランドから、外出時やアクティビティにも役立つ、夏の必携グッズをピックアップ!
※特設コーナーの有無は店舗によるため、事前に確認するのが無難
DAISO(ダイソー)

日本発のバラエティショップ「ダイソー」は、品質と機能性を兼ね備えた日用品を手頃な価格で提供する世界的ブランド。ドバイではDubai MallやMarina Mallなどに出店し、整然とした陳列や日本的な工夫に富んだ商品展開で多国籍の客層から支持を得ている。


MUMUSO(ムムソー)

MUMUSOは中国・杭州に本社を置くブランド。韓国風デザインを取り入れたスタイリッシュな商品展開が特徴で、雑貨、ビューティー、ファッション小物などを幅広く扱う。特にカラフルでポップな商品が多く、若者や女性層を中心に人気を集めている。


MINISO(メイソウ)

MINISOは中国・広州に持つブランド。日本式のミニマルデザインと品質管理を掲げ、生活雑貨、文房具、コスメ、ガジェットなどを手頃な価格で提供。シンプルで洗練された商品が整然と並ぶ店内は、“日本風”イメージで統一されている。


ドバイ在住医師が語る「命を守る熱中症対策」

ドバイの夏は、気温が連日40度を超える過酷な環境。しかも、暑さは6月から9月まで続き、外に出るだけでも危険を感じられるほど。そんな中で、ドバイ在住の永野医師に、熱中症のリスクと対策について詳しく聞いた。

熱中症のリスクは初夏から本格化する
永野医師によれば、熱中症患者はドバイでは決して珍しくない。特に6月は注意が必要だという。「7月や8月になると体が暑さに慣れてくるのですが、6月は“体が仕上がっていない”状態であり、そのため症状が重くなる人も多いです」。
クリニックに来るのは、「だるい」「熱が出た」「フラフラする」「吐き気がある」といった軽〜中等症の人たちが大半。特に、ドバイに来たばかりの人が熱中症に罹患するケースが多く、「日本では大丈夫だったのに、ドバイに来てから熱中症にかかる人がいます。体がまだ慣れていないのです」。

熱中症が徐々に進行するのも注意すべきポイント。初期症状は「体がほてる」「フラッとする」「頭が重い」といった曖昧な症状が出ることが多く、本人も周囲も見過ごしがち。しかし、その後、「熱が下がらない」「足がつる(こむら返り)」「手足が震える」「脱力感」「吐き気」「動悸」などが現れ、進行すると「意識が朦朧とする」「水分を取れない」という危険な段階に入る。「水分を取れない=飲もうとしても飲めない」は非常に危険な兆候であり、点滴による対応が必要となる。永野医師は「この段階になったら、すぐに救急車を呼ぶべきです」と警鐘を鳴らす。
麦茶がおすすめ。効果的な水分補給の極意

水分補給の基本は、”こまめに適切な飲み物”。一般的には、30分に1回コップ1杯の水分摂取が推奨されているが、ドバイのような過酷な環境ではそれでは足りない。永野医師自身は「1時間に1リットル以上飲むこともある」と語る。
おすすめは麦茶。カフェインを含まず、ミネラルも補えるうえに安価というコスパ面に優れる。「ポカリスエットや経口補水液も良いのですが、麦茶は最適だと思います」と永野医師。実際、一般的な麦茶には微量の塩分も含まれており、脱水対策としては理にかなっている。また、ドバイでは、塩分補給用のタブレットなどがあまり販売されていないため、積極的な塩分補給も不可欠。
ちなみに、アルコール摂取後の水分補給についても注意が必要。アルコールには利尿作用があるため、結果的に体内の水分を奪ってしまう。「お酒を飲むなら、同じくらいの量の水を一緒に取ることも忘れないでください」と永野医師は話す。
6月は暑熱順化が最重要ポイント

「汗をかく練習」=暑熱順化は、熱中症対策の最重要ポイント。エアコンの効いた快適な生活に慣れていると、いざという時に汗腺がうまく働かず、体温調節ができなくなる。永野医師は「ドバイで暮らす人は週3〜5回、30分程度の軽い運動を行い、意識的に汗をかいてください」と説明する。
具体的には以下の方法が効果的。①ウォーキングや軽いランニング(できれば午前中や夕方などの涼しい時間)、②エアコンを切った室内でのストレッチ、③湯船に浸かる(入浴剤でリラックス効果も)。
「大事なのは、“習慣としての汗”をかけるようになること。そうなれば体が熱を外へ逃がす機能を取り戻します」
子どもの状態確認には「機嫌のチェック」

小さな子どもは体温調節機能が未発達で、また「喉が渇いた」と自ら訴えることも難しい。そこで親の役割が重要となる。「30分ごとにコップ1杯を目安に、親が水分を与えてください。特に小さなお子さんは機嫌が悪くなることが、脱水のサインの一つです」と永野医師。
元々、小児科では「機嫌の良し悪し」が重症度を見極める大切なポイントとされている。機嫌がよければ重症ではない可能性が高く、逆に不機嫌でぐったりしている場合は、すぐに医療機関を受診する判断材料になる。また、ここでも麦茶は子どもにとっても最適な飲み物。カフェインがなく、自然な味わいのため、抵抗感なく飲むことができる。冷たすぎると逆にお腹を冷やしてしまうこともあるため、常温か少し冷たいくらいが理想的。
緊急時対応と医療リソースの使い方

「水分が取れない」「意識が朦朧とする」などの症状が見られた場合は、即座に病院へ行くべき。ドバイでは救急車(番号:998)を呼ぶことができ、保険に入っていれば無料で利用できる。
搬送先としておすすめされるのは、以下のような施設が充実した病院。
・サウジジャーマンホスピタル
・アメリカンホスピタル
・メディクリニック(ヘルスケア・シティやドバイヒルズなど複数拠点あり)
「少し調べれば、近隣の病院に行くことで時間的ロスを防げます。必要があれば、事前にかかりつけクリニックに連絡し、指示を仰ぐのも有効です」と永野医師。病院では、まず看護師がバイタルサインを測定し、医師が診察。必要に応じて採血や点滴などの処置が行われる。飲水が可能であれば点滴は回避できるが、口から水を受け付けない状態であれば、点滴による即時の水分補給が行われる。
猛暑を避ける建築の知恵。伝統と現代技術の融合
灼熱のドバイで人々が快適に暮らすための知恵は、生活の基盤とも言える建築にも生かされている。ドバイ市内のOne Za’abeelを手掛けたことでも有名な設計事務所の日建設計へのインタビューを通じて、猛暑を和らげるための建築的工夫と、ディストリクトクーリングをはじめとする冷房インフラの現状と課題を探った。
アラブ建築の知恵、再評価の兆し

注目されるのは、伝統的なウィンドタワー(バードギール)である。上空の風を屋内に導入し、自然換気と冷却を図るこの技術は、ドバイにおいて再評価されつつあるという。
「現代にも応用可能な技術です。一部プロジェクトでは、ウィンドタワーの原理を活用しています。例えば、地中の冷気を中間階に導き、建物上部へ通すことで自然な冷却効果を得る“煙突効果”などがその応用例です」
また、アラブ住宅の伝統的要素ーー厚い壁、白い塗装、中庭(コートヤード)なども現代建築に取り入れられている。特にコートヤードは高級ホテルをはじめ、多くの建築で活用されており、空調された空気が溜まる「浸み出し空調」としても機能。Ritz-Carlton DIFCのベルギーカフェや、WafiのKHANMURJANの中庭はその好例。屋外の気温が40度を超える日でも、適切に設計された中庭は涼しさを保ち、人々に快適な空間を提供する。「よく設計された中庭は冷気を保ち、非常に暑い気候でも快適な屋外空間を提供します」
高層ビルにおける伝統の活用

では、こうした伝統的知恵は現代の高層ビルにどのように生かされているのか。「高層建築でも、庇(ひさし)やルーバーを用いた日射遮蔽、熱反射素材の活用など、伝統的要素を再構成する設計が増えています。
また、現代のプロジェクトでは、イスラム文化に敬意を表しながら、環境に配慮した設計を取り入れています」。このように、伝統を尊重しつつ最先端技術と融合させる姿勢が、ドバイの持続可能な都市づくりの鍵となっている。
ディストリクトクーリングがもたらす可能性と課題
ドバイの猛暑を支える冷房インフラの中心的存在が、世界最大規模とも言われるディストリクトクーリングである。これは地域全体に冷気を供給するシステムであり、建築設計の自由度にも影響を与える。「クーリングタワーや大型の機械室を屋上に設置する必要がなくなり、建物の上部のデザインに柔軟性が生まれます。日本では限られたエリアにしかディストリクトクーリングがなく、機械室が設計を制限してしまいますが、ドバイではその制約がありません」。

ただし、効率的な冷房には建物の設計そのものにも工夫が求められる。「日射を遮る庇やルーバー、太陽光を反射するガラスや素材の使用が効果的です。弊社設計の『ドバイ・ハーバー・レジデンス』では、広く張り出した軒を採用し、日差しを遮りつつ詩的な影を生む工夫を施しました。影が揺らめく空間は、暑さを和らげるだけでなく、情緒的な価値も提供します」
気候変動と都市設計の未来

ドバイは気候変動への対応として、省エネ設計や再生可能エネルギーの活用を加速させている。例えば「クリーンエネルギー戦略2050」に基づき、大規模な太陽光発電、廃棄物発電施設、淡水化プラント、そして、82億ドル規模の排水プロジェクト「タスリーフ」などの施策が進行中だ。「2030年までに炭素排出量を50%削減する目標を掲げ、緑地の拡大、持続可能な都市インフラの整備にも注力しています。建築においても、自然換気や中庭、パッシブクーリングなど、気候に即した知恵が活用され、公共空間と歩きやすい都市計画も重要視されています」
ドバイにおける建築は、単なる「建物」を超えて、環境と人々の暮らしをつなぐインターフェースである。猛暑を和らげる工夫の中に、伝統と革新の融合を見ることができる。都市の未来は、こうした知恵の積み重ねの上に築かれていく。





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