いけばな小原流UAE・大木支部長「一生学び続けるという"道"の精神性にハマっていく方が多いです」

Desert Icons Vol. 10 大木春慧(いけばな小原流UAE支部長)。砂漠の都市からグローバルハブへの進化。ドバイの発展を牽引するキーパーソンに迫り、彼らの革新と成功の秘密を探求する。
UAEに広がる生け花の美
--いけばな小原流のUAEの開始時期やきっかけを教えてください
2014年にアーメッド&ラシッド・ビン・シャビブ兄弟(ドバイ出身の都市研究者。雑誌「Brownbook」を主宰)のサポートにより、ドバイで教室を開始しました。アブダビは2015年です。私は別の理由でドバイに来たのですが、現地UAEの方々に「日本文化を学べる場が少ないから、広めたらどうか?」とすすめられたのがきっかけです。

--メンバーはどれくらいいますか
ドバイとアブダビを合わせてレギュラーのメンバーは40人くらいで、師範は8名です。ビジネスベイと、マリーナにも分教室があります。2021年にはUAE人初の師範、アマニさんが誕生し、アブダビでアラビア語のクラスを担当しています。
--アマニさんは、どれくらいの期間で師範になったのでしょうか
2014年に彼女の大学で行われたジャパンフェスティバルで生け花を知り、そこから興味を持ちました。大学卒業後に本格的に学び始め、約6~7年かけて師範になりました。
--外国の方に生け花を教える際に難しいことはありますか
生け花とフラワーアレンジメントの違いを理解してもらうことですね。フラワーアレンジメントは「花を組み合わせて華やかにする」ものですが、生け花は「削ぎ落とした美しさ」が大切。この「省く」という考え方に慣れるまで時間がかかる方もいます。
中東で理解されつつあるモダンジャパニーズ
--そもそも生け花を知らない人に説明するのはさらに難しいのでは
そうですね。一番大事なのは「道」という精神性です。生け花は資格を取って終わりではなく、一生学び続けるもの。茶道や剣道、柔道と同じで、段階を踏んで成長していきます。外国の方は最初、この「終わりがない」という考え方に戸惑いますが、そうした心の修行というか瞑想のような意味合いを理解してもらうことで、結果的にハマっていく方が多いです。
--男性のメンバーもいるのでしょうか
UAE人、フィリピン人、エジプト人などの男性メンバーがいます。本来、生け花は男性がやってもおかしくないものですし、実際、日本の家元も男性です。生け花というと「静かにお花をいける」イメージがあるものの、実際は肉体労働が必要で、大きな枝を運んだり、水を汲んだりするため、男性のメンバーがいるととても助かります。
--UAEの人たちには、生け花のどのような点に興味を持っていますか
アラブの伝統的な装飾文化だと、金や豪華なデザインが多いですよね。それに対して、生け花の「シンプルな美しさ」が新鮮に感じられるみたいです。2014年くらいから、若いUAE人たちも日本旅行をするようになり、ミニマルな「モダンジャパニーズ」のスタイルが好まれるようになりました。その流れと生け花の普及がちょうど合致したのかなと思います。

--桜の木も有名ですよね
2019年に日本政府観光局(JNTO)がアラビアン・トラベル・マーケットで大きなパビリオンを出し、私はそこに桜を飾る役割を担いました。何百本もの桜を取り寄せ、日本の春の美しさを再現しましたが、桜の力はやっぱりすごいです。日本では「季節」は単なる気候の変化ではなく、文化に深く根付いています。生け花もただ花を生けるだけじゃなくて、日本の行事や四季の移り変わりを感じる手段のひとつ。だからこそ、生け花を通じて、日本の文化や伝統の奥深さを味わってもらえたらうれしいです。特に小原流は四季の花の組み合わせを大事にする流派なので、日本から毎月季節のお花を入れています。
--今後の目標は
GCCで生け花の普及を進めていきたいですね。UAE人の師範も増えてきたので、より現地に根付く形で広められればと思っています。また、ここで学んだメンバーが母国に帰って教室を開くケースも増えてきています。ドバイ発の生け花が、世界に広がっていくことを期待しています。




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