チームラボ・猪子寿之が導く「物体なき彫刻」の世界観。アブダビに現れた新次元アート

猪子寿之(Founder of teamLab)。1977年、徳島市出身、アート集団チームラボの創設者兼代表。2001年、東京大学工学部計数工学科を卒業後、アート集団チームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。チームラボは、アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、多様な専門家で構成される集団であり、デジタル技術とアートを融合させた没入型の作品で国際的に高い評価を得ている。大阪芸術大学客員教授なども務めるなど、教育・学術の分野にも貢献している。

Desert Icons Vol. 14 猪子寿之(Founder of teamLab)。砂漠の都市からグローバルハブへの進化。ドバイの発展を牽引するキーパーソンに迫り、彼らの革新と成功の秘密を探求する。

アブダビに誕生した“体験を包み込む建築”。チームラボ最大規模の挑戦

--アブダビのサディヤット文化地区にオープンしたteamLab Phenomena Abu Dhabi。総床面積17,000平方メートルの本施設は、チームラボにとって過去最大のプロジェクトであり、日本に関心のあったアブダビ文化観光局(DCT)モハメド・ハリファ・アル・ムバラク局長と意気投合したところからプロジェクトが始まったと伺いました
猪子 DCTが開発を進めるサディヤット文化地区には、現在、人類の歴史を俯瞰するルーヴル・アブダビ美術館があり、特定の地域や宗教に偏りなくコレクションを集めたグッゲンハイム・アブダビ、UAEの文化を紹介するザイード国立博物館、そして自然史博物館がこれから加わる予定です。
 長官の言葉でいえば、「旅」をするように島内の施設を巡る。当館はそんな、世界的にも例を見ないこの文化施設の集積地に、5つの大型施設の3番目として建てることができました。

4月18日にオープンした「teamLab Phenomena Abu Dhabi」。アブダビ文化観光局のサポートを受けて誕生した注目施設は早くも人気で、週末には多くの人で賑わう。中東では、ジッダに次いで2番目

--東京・麻布台ヒルズにあるチームラボボーダレスなど、これまでのアートミュージアムに比べても展示空間がかなり広く、作品の大きさに息を吞みました。UAEならではの作品はありますか?
猪子 僕たちは場所に合わせて作品をカスタマイズするということはなく、いかに新しい体験を提供できるかを追求しながら、自分たちの作品作りを続けています。東京とジッダ(サウジアラビア)のチームラボボーダレスは、いずれも「境界のない世界」を体験してもらえるよう作っている。
 ただ、アブダビでユニークなのは、作品があって、建築があること。通常は既にある建物の天井高や柱の位置に合わせて、作品を納入します。しかし今回は、まず我々が体験を創造し、それを実現するための建築がイチから設計され、結果的に圧倒的な空間を作ることができました。ムバラク長官が日本国内のチームラボのアートミュージアムを見学し、枠にとらわれない施設作りがよいと提案してくださったのが、叶ったわけです。

「物体ではないが確かに存在する」という作品コンセプトの特徴

--施設名の「フェノメナ」にはどのような意味が込められていますか?
猪子 施設のコンセプトとして新たに作った言葉が「環境現象(Enviromental Phenomena)」。環境が現象を作る、ということを指しています。僕が生まれた徳島県の鳴門海峡では渦潮がみられますが、渦潮は海水の流れによってできる現象で、渦自体は構造を持ちません。
 しかし、渦という存在はそこにある。エネルギーの秩序が存在を形成しています。彫刻は通常、石こうや木で制作されますが、ここでは用意した環境によって作られた現象が作品としてあり、僕らはそれらを彫刻と呼んでいます。

--具体的にいうと、どのようなことでしょうか?
猪子 例えば、「Massless Amorphous Sculpture」という作品。部屋の中を浮遊する泡が集まって、大きな塊となります。あれは「存在」ですよね。風というエネルギーの秩序が空間中をまわって、「存在」を作り上げています。
 他には「Morphing Continuum」という作品では部屋中を飛び交う銀色の球体がくっつき合って、大きな「存在」ができる。存在が物体とは違って、物理的結合のない新たな「存在」となっているわけです。

「Morphing Continuum」では、風船のように浮遊する発光体が、うねりの中で一体化する現象が実に不思議であり、人々を魅了する

--作品を通じてどんな体験をしてほしいですか?
猪子 物質的なもの、たとえばガラスは割れて壊れてしまいますよね。しかし、渦潮は渦を壊そうとしても、瀬戸内海と紀伊水道の干満差という環境があるかぎり、そこに存在し続けます。泡の塊も、中に人が入っても壊れない。そればかりか、中空に停止したり、落ちたり浮いたり……、物体的な常識に反する動きが生まれます。そんな普段は体験することのない体験を通して、世界の見え方が広がっていくといいです。
 人間はその身体が物体だから、境界があって独立した構造を持つような、物体的なものに常識が偏ってしまっている。でもこの世界は、本当は物体的でないものにあふれていますよね。僕らが抱いた物体的でないものに対する興味に、来館者のみなさんの意識が向くといいなと思っています。

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