中東調査会 齋木昭隆理事長(後編)「UAEをハブと認識することでアフリカなどのマーケット拡大につながる」

Executive Dialogue Vol. 7 公益財団法人 中東調査会 齋木昭隆理事長。Gates of Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

元・外務事務次官。1976年東京大学教養学部卒業後、外務省入省。外務大臣秘書官、人事課長、駐米特命全権公使、外務省アジア大洋州局長、駐インド特命全権大使(ブータン兼任)、外務審議官(政務)等を経て、2013年から2016年まで外務事務次官。2016年退官。2017年から2023年まで三菱商事株式会社 社外取締役。2017年より公益財団法人中東調査会理事長、また2022年より公益財団法人日印協会理事長

エネルギー分野、AI分野に注目。日系企業が出資する淡水化事業も重要

※前編はこちら
永杉:すでにさまざまな日系企業が進出していますが、注目している事業などはありますか。

齋木:まずは、アブダビで2028年から生産が始まるルワイスLNGプロジェクトです。三井物産などが出資する大規模プロジェクトですが、これが始まると生産量は現状の2倍以上である1,560万トンに増加する見通しです。天然ガスは脱炭素化の流れの中でも非常に重要なエネルギーですので、これに日系企業が加わることは明るい話題として見ています。

また、AI分野にも注目しています。すでに東北大学や東京大学などの研究者がUAEに招かれ、現地で最先端の研究に携わっているという話もあります。このように将来につながる技術研究を両国の人材が協力して行うことは、大切なことです。

そして、水や食料問題に関する事業にも注目しています。例えば、日系企業も多く出資する淡水化事業が挙げられます。淡水化された水は農業にも使用できるため、今後より深刻化するであろう食糧問題に対応するためにも、重要な事業と考えています。

2009年12月、国家副主席(当時)だった習近平氏が来日した際の写真

UAEへの理解とリスペクトを持つことが必要

永杉:今後、UAEに進出する日系企業に対して、何かアドバイスをお願いします。

齋木:まずは「UAEへの理解とリスペクトを持つこと」です。UAEの人々は大変親日的ですが、その思いが一方通行であってはいけません。残念ながら、現状は日本人のUAEに対する理解度は高くありません。彼らの食文化や伝統文化などを理解し、尊敬を表明することで初めて対等な関係になれると思います。

次に「ビジネスパートナーと対等な関係を築くこと」です。海外でビジネスをする場合、現地でパートナーを見つける必要がありますが、ここで日本の企業だけが利益を得るような仕組みを目指さない方が良いでしょう。お互いが利益を享受できることが、海外で長くビジネスを続けるコツだと思います。

最後は「UAEをハブとして認識すること」です。もちろん、UAE単体でも大きなマーケットですが、地理的に見ると、他の中東諸国やアフリカ、ヨーロッパ、インドなど大きなマーケットへのハブとして機能しうる場所に位置しています。そのため、進出にあたっては、グローバルな展開も見据えた戦略を採ることが必要ではないかと考えています。

永杉:ご指摘の通りだと思います。なかでも、UAEへの理解度をもっと高めるべきというご意見は私も強く同意します。一番身近な食文化ですら、日本人はUAEのことをほとんど知りません。これは本当にもったいないことだと思います。より両国の関係が深まるよう、我々も微力ながらUAEの文化を日本に広める活動をしていきたいと考えています。本日はお忙しい中ありがとうございました。

永杉豊。GATES MEDIA FZCO CEO、アラブ通信社代表取締役。学生時代に起業、米国永住権取得後、ロサンゼルス、上海、ヤンゴン、ドバイに移住し現地法人を設立。ミャンマー問題に精通した専門家として多数のテレビ番組に出演する。クーデター後のミャンマー困窮者と民主化支援のため2022年にNPO法人ミャンマー国際支援機構を安倍昭恵氏や逢沢一郎衆議院議員らとともに設立、代表理事に就任。2023年度社会貢献者表彰を受ける。主な著書に「ミャンマー危機」(扶桑社)。

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