中東調査会 齋木昭隆理事長(前編)「中東問題はアメリカの選挙や世界情勢にも影響を及ぼす」
Executive Dialogue Vol. 7 公益財団法人 中東調査会 齋木昭隆理事長。Gates of Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

設立64年を迎えた中東地域専門のシンクタンク
永杉:今回は、元外務事務次官で現在は公益財団法人中東調査会の理事長である、齋木昭隆さんにお話をうかがいます。まずは中東調査会について教えてください。
齋木:中東調査会は、中東に関する調査・研究を行う日本初の政府から独立したシンクタンクです。歴史は古く、設立から今年で64年を迎えました。現在は公益財団法人として運営しており、国からの補助金ではなく、会員からの年会費が財政基盤となっています。活動内容は多岐にわたりますが、当会はシンクタンクですので、まずは中東地域の調査・研究が挙げられます。研究員はアフガニスタンやイランなど、中東地域の大使館に勤務経験がある者も多く、現地の感覚を肌で知っている優秀な人材が揃っています。彼らはテレビ出演や新聞への寄稿も多いので、そうしたメディアで当会の名前を目にすることも多いはずです。
研究内容を会員にシェアするとともに、会員同士の交流の場を作ることも大切な活動です。例えば最近では、日本とトルコの外交関係樹立100年を記念した大規模なシンポジウムを開催しました。また、毎月一回ホテルオークラで朝食講演会を行っています。これはずいぶん長いこと続けている催しで、毎回50社ほどの企業が参加します。ゲストの講師を招くのが恒例で、例えば元防衛大臣や外務省の元外務審議官、各国の駐日大使など、他にもサッカー日本代表の森保監督にもお越しいただいたこともあります。

永杉:中東でビジネスをするのであればぜひ加入したい会ですが、少々敷居が高そうですね。
齋木:入会にあたっての条件などは一切ありません。すでに中東に進出済みの企業だけでなく、進出を検討している企業も大歓迎です。マスコミ各社も参加しており、当会を通じて中東に関するさまざまな知見を交換できるので、大変有意義な会だと考えています。
中東で起こる問題はアメリカの選挙にも影響
永杉:現在の中東情勢についてお聞きします。中東全体を俯瞰すると、ネガティブな話題も多く見受けられる地域です。
齋木:目下、イスラエルとパレスチナが地域最大の問題でしょう。2023年10月7日に起こったハマスによるテロ行為は許されざるものです。一方、その報復としてネタニヤフ首相が行ったガザ攻撃はやりすぎであるという意見にも同調できます。私はこうした2つの考えの対立が、世界情勢に広く波及していることに注目しています。影響の一つとして挙げられるのが、11月のアメリカ大統領選挙です(編注:本インタビューは選挙前に実施)。
アメリカは伝統的にイスラエルとの関係が強く、アメリカの政治においてユダヤロビーは無視できない存在です。そのため、どれだけ国際社会から突き上げられてもイスラエルを見捨てられないのです。一方、イスラエル寄りの政策は、選挙で不利に働くことがあります。アメリカ大統領選挙を勝ち抜くには「スイング・ステート」と呼ばれる7州で勝利することが重要。そのうちの一つであるミシガン州にはアラブ系の住民が多く住んでおり、彼らの票の行方は非常に注目されています。
トランプは現職時にイスラエルを優遇していたため、今回の選挙でアラブ系の票は民主党に流れるのかと思いきや、彼らはバイデン政権がイスラエル寄りの動きを見せたことにも強く反発しています。結果的に票がどちらに流れるかということは、注目すべき事柄だと考えます。このように中東問題というのは、アメリカの政権成立をも左右する問題で、ひいては今後の世界情勢にも影響を及ぼす問題なのです。

永杉:UAEに対してはどのような印象をお持ちですか。
齋木:非常に安定した国であると認識しています。永杉さんもミャンマーでのご経験があると思いますが、治安・経済ともに安定することは本当に大切で、それがなければ企業は安心して進出できません。また、UAEは日本の国民性や文化などに対して好意的に見てくださる方が多いという印象も持っています。治安の安定と親日的な雰囲気という土台があるので、現在、多くの日系企業がUAEに注目していることは必然と言えるでしょう。
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