「ドバイにおける紛争解決:準拠法と裁判所の選択」コッチャー法律事務所の弁護士が解説

アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイへの日本からの投資が増加する中で、現地における「紛争解決の仕組み」を理解することは非常に重要です。ドバイにおける商業契約では、主に以下の3つの紛争解決手段が用意されています。ドバイ本土(オンショア)裁判所、ドバイ国際金融センター(DIFC)裁判所、仲裁(Arbitration)。どの手段を選ぶかによって、紛争解決にかかる時間や費用が大きく変わる可能性があります。
ドバイ本土(オンショア)裁判所
オンショア裁判所は「大陸法」を基盤とした制度で、過去の判例には拘束力がありません。裁判はすべてアラビア語で行われ、書類提出もアラビア語が必須です。不動産や雇用に関する紛争については、このオンショア裁判所が専属的な管轄を持ちます。また、当事者がどちらもUAE国内の企業であり、契約に明確な紛争解決条項がない場合には、この裁判所が利用されます。複雑な事案では、専門的な知見を持つ委員会(エキスパート・パネル)が必要となることもあり、解決までの期間はケースにより異なります。
DIFC裁判所

DIFC裁判所は「コモン・ロー(英米法)」を採用しており、言語は英語です。契約によってDIFCの裁判管轄を選ぶことができ、実際の紛争がDIFCと直接の関係を持たない場合でも指定可能です。手続きが効率的で、国際的に評価の高い判決を下すことから、外国人投資家には特に人気があります。簡易な案件であれば、DIFCの小額訴訟法廷(Small Claims Tribunal)で3~6か月程度で解決されることもあります。
仲裁(Arbitration)

仲裁は、秘密性・柔軟性・当事者の裁量が高い点が特徴です。特に、国境をまたぐ取引や技術的な問題を含む商業紛争に適しています。当事者は、業界に精通した仲裁人を選定できるほか、手続きそのものも合意に基づいて柔軟に設計できます。たとえば、ドバイ国際仲裁センター(DIAC)の2022年ルールでは、迅速手続きを選択することも可能です。
UAE国外での判決や仲裁判断の執行も重要なポイントです。オンショア裁判所やDIFC裁判所の判決は、UAEと相互執行条約を結んでいる国であれば、現地での執行が可能です。一方、仲裁判断は、「ニューヨーク条約」加盟国であれば執行可能です。ただし、いずれの方法でも、国によっては手続きに時間や障害が発生することもあるため、注意が必要です。
重要な検討ポイント

紛争解決手段を選ぶ際には、以下の要素を総合的に検討すべきです。使用言語、中立性、判決の執行可能性、コスト、取引の性質。契約書には、どの手段で解決するかを明記し、あわせて準拠法(どの国の法律に従うか)や使用言語も記載しておくことが、トラブル回避には不可欠です。すべての取引に共通する「正解」はありませんが、日本企業にとっては、英語対応が可能なDIFC裁判所や仲裁の方が、手続きや言語の面で馴染みやすく、好まれる傾向があります。明確な裁判管轄条項を設けることで、紛争時の不確実性を減らし、ビジネス上の利益を守ることができます。
ドバイの日系企業の案件を数多く手がける「コッチャー法律事務所」

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