ドバイの法律事務所が解説するビジネスの注意点、仮想通貨、知的財産権

VikRohit Kochhar(Chairman, Kochhar & Co Inc.)。35年以上の豊富な法務経験を有するコッチャー法律事務所の創業者。コッチャー法律事務所は、インド国内7都市および海外3拠点に展開する唯一のインド系法律事務所であり、企業法、商事法、M&A、雇用法、訴訟・仲裁など幅広い分野でフォーチュン500企業を含む多くのクライアントにサポートを提供。コッチャー氏は、これまで100社以上の日系企業を支援し、インド国内外で高い評価を受けてきた。受賞歴も豊富で、Forbes誌より「インドのトップ・マネージングパートナー」、India Business Law Journal より「インドの法律界を代表する50人」の一人として選ばれている。

Desert Icons Vol. 10 VikRohit Kochhar(ロヒット・コッチャー/Chairman, Kochhar & Co Inc.)。砂漠の都市からグローバルハブへの進化。ドバイの発展を牽引するキーパーソンに迫り、彼らの革新と成功の秘密を探求する。

ドバイの法制度が他国と異なるポイントとは?

--どのような分野での訴訟が多いですか?具体例を教えてください
 ドバイでは、建設、不動産、雇用分野において係争が多発しています。例えば、ある建設会社が突然の契約解除に直面し、6億5,000万AED(約260億円)の損害賠償請求を行ったケースがありました。不動産分野では、オフプラン(建設中)プロジェクトの遅延や、購入者との契約条件の相違が典型的な例。
 あるプロジェクトでは、2年以上の遅延が発生し、購入者が契約解除を求めて開発業者と法廷で争う事態に発展しました。また、賃料の値上げや修繕費をめぐるトラブルもよく見られます。雇用分野では、解雇や退職金に関連する訴訟が目立ちます。最近では、不当解雇を主張した従業員が裁判で勝訴し、最終的に和解金を獲得した事例もあります。

インド国内7都市および海外3拠点に展開する唯一のインド系法律事務所。ドバイオフィスはビジネスベイにある

--ドバイの法制度は他国とどう異なりますか
 ドバイの法制度は、民法、シャリア法、およびDIFC(ドバイ国際金融センター)やアブダビグローバルマーケットのフリーゾーンで採用されている英米法が組み合わさった複雑な仕組みです。メインランドの商業契約において、DIFC裁判所を通じた解決を明記していない場合、その訴訟はUAEの地方法院で審理され、民法が適用されます。   
 UAEの地方法院ではアラビア語が唯一の公用語であり、全ての書類や弁論はアラビア語で行う必要があります。ドバイの裁判所は処理速度が非常に迅速ですが、外資企業による商業案件では、DIFC裁判所やDIAC仲裁を訴訟解決手段として指定することを強く推奨します。ある日系企業が英米法を基準とした契約を活用し、商業トラブルを即座に解決した事例があります。

--日系企業との関係について教えてください
 当事務所は長年にわたり日系企業と深い関係を築いてきました。その始まりは1994年の設立当初に締結したパナソニックとの契約です。この協力関係はインドで始まり、その後ドバイでも継続しました。他の主要な日系クライアントには、伊藤忠商事、本田技研工業、日産自動車、ソフトバンク、荏原製作所、明電舎などが含まれます。

--日系企業がドバイで注意すべき点は何ですか
 UAEの厳格なアンチマネーロンダリング(AML)規制により、取引相手との取引において徹底したKYC(顧客確認)が必要です。例えば、取引相手が不正行為で調査対象となった場合、適切な手続きを行っていない企業にも影響が及ぶ可能性があります。

ドバイでの商標・著作権登録の必要性と実務対応

--労働条件の変更や解雇に関する係争が増えていますが、どうお考えですか
 明確で包括的な雇用契約が不可欠です。例えば、ある日系企業が休日手当を契約書に明記しなかったために法廷で争う事態になったケースがあります。こうした問題を防ぐには、専門の法律顧問による契約の確認が重要。また、雇用主の利益を保護しつつ、従業員にとって公正で合理的な条項を含めることが求められます。さらに、社内コミュニケーションを強化し、イベントを通じて信頼関係を築くことも有効です。苦情処理機構を設けることで、トラブルが法廷に持ち込まれるのを未然に防ぐことができます。

--仮想通貨で注意すべき法的問題は何ですか
 詐欺取引やスマートコントラクトの違反がよく見られる課題です。信頼できる相手との取引が不可欠。例えば、認可されていない売り手からデジタル資産を購入し、結果的に詐欺事件に発展したケースがあります。

--知的財産権の保護についてのアドバイスをお願いします
 知的財産は重要な事業資産です。商標や著作権はUAEで必ず登録し、侵害が発生した場合は迅速に適切な法的手段を採る必要があります。例えば、ある日系企業が模倣品の販売を発見した際、差止通知を送付し早期解決に至った事例があります。契約書には明確な知的財産保護条項を含めることが推奨されます。また、従業員に対して、知的財産の重要性を教育する機会を設け、遵守すべき行動指針を共有することが必要です。

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