ドバイの仮想通貨〜入門編。税制などのメリットや取引の始め方、会計士が注意点を解説

ドバイ在住者でも「仮想通貨? なんか怪しい」と感じている人は少なくない。ニュースで話題になる「ドバイ仮想通貨」というキーワードには、常にマイナスの印象がつきまとう。しかし、知らない=嫌うのではなく、少し視点を変えてみてほしい。ドバイで仮想通貨を始めるメリットは大きく、それは同時にWeb3技術の理解を深める絶好の機会でもある。仮想通貨の可能性に触れることで、ネガティブなイメージを払拭するきっかけとしてほしい。
※仮想通貨は、2020年に日本の金融庁が呼称を暗号資産と改めたものの、今回は検索ボリュームの多い仮想通貨で統一する。
仮想通貨・基本知識~ドバイのメリット編

- 仮想通貨の利益確定(利確)に対する税金は、税務上の居住地がどこにあるかによって決まる。日本に住民票がある場合、海外で利確したとしても全世界所得課税が適用され、日本での申告が必要。利益が年間4000万円を超える場合、最大55%の税率が課される。一方、ドバイで1年以上居住していれば、非課税となる。
- 2024年12月16日付のForbes JAPANの記事によれば、2025年に「アルトコインの時代」が到来し、時価総額が300兆円規模に達する可能性があると報道されている。ビットコインの価格が10万ドルを超える中、多くのアルトコインがビットコインを上回るパフォーマンスを示し、「アルトコインシーズン」の到来が示唆されている。日本では、限られたアルトコインしか購入できないが、ドバイでは幅広い選択の購入が可能となっている。
ドバイで仮想通貨を始めるメリット
ドバイ在住、仮想通貨に詳しく、note「ドバイ不動産の歩き方」で情報を発信している新倉氏に具体的なメリットを聞いた。

ドバイにおける税制優遇
ドバイでは仮想通貨取引による利益に対して一切課税が発生しないが、日本では仮想通貨取引による利益は「雑所得」として最大55%(所得税45%+住民税10%)の税金が課される。例えば、ビットコインから別の仮想通貨(イーサリアムなど)に交換する際にも、含み益がある場合は「利確」とみなされ課税対象。そのため、日本では税務処理が非常に煩雑。
「ドバイの税務上の居住者になれば、税務手続きを気にせず仮想通貨の運用が可能です。ステーキング(下記で説明)やレンディング、トレードなど、どの運用方法でも税負担がないため、自由な投資戦略を組むことができます」(新倉氏)
仮想通貨運用の自由度

日本では、仮想通貨の売買や運用に税金や規制の壁が多く、運用の自由度が制限されている。しかし、ドバイでは以下のような投資が容易。
日本の制限とドバイの自由
1.ステーキング:仮想通貨を預けて報酬を得る。
2.レンディング:仮想通貨を貸し出し、利息を受け取る。
3.レバレッジ取引:100倍以上のレバレッジを利用し、効率的な資産運用が可能。
「日本はレバレッジ規制で2倍が限度ですが、ドバイでは柔軟な運用ができます」(新倉氏)
P2P機能とは?
P2P(ピア・トゥ・ピア)取引とは、ユーザー同士が直接仮想通貨を売買できる機能。メリットは、レート交渉が可能で、手数料を抑えながら直接的な取引ができること。
具体的な仕組み
1.売り手がBinanceなどの取引所に仮想通貨(例:イーサリアム)を預ける。
2.買い手が掲示板上で購入希望を出し、取引が成立するとBinanceがエスクロー(第三者保証)として仲介。
3.両者の送金確認後、仮想通貨が買い手に渡る。
「日本の取引所では制限が多いですが、ドバイの取引所なら基本的にすべての機能が使えます。レバレッジ取引やP2P機能も充実していますね」(新倉氏)
アルトコインやミームコインへの投資機会

「アルトコイン」や「ミームコイン」は、ビットコインやイーサリアムに比べて価格の変動が大きく、一攫千金を狙う投資家に人気。日本でもアルトコインを購入することは可能だが、金融庁の規制により種類が限られている。安全性とリスクをよく理解した上で判断することが重要。
「宝くじのようなものですが、ときには大化けすることもあります。10年以上前にビットコインを購入していれば、今では数千倍の価値になっていますので」(新倉氏)
仮想通貨の始め方 in ドバイ

ドバイでの仮想通貨の始め方は迅速で簡単。オンライン手続きで最短10分で口座開設が可能。思いのほかスムーズなので、ぜひともトライしてみてほしい。
取引所の口座開設に必要書類
●エミレーツID or パスポート
●銀行の口座明細、もしくは公共料金の請求書(住所証明書類/取引所によっては不要)。手続きはオンライン上で完結し、本人確認(KYC)を実施すれば、10分~2日程度で口座が開設。手続きの流れとしては、書類の提出、顔認証、AIによる自動審査が行われ、問題がなければ取引が可能となる。

スタートまでの手順
①目的を明確にする
投資(値上がり益を狙う)、送金、実用目的(決済・送金)などを決める。
②取引所を選ぶ
UAEで人気なのは、Binance、BitOasis、Kraken、Rain、Crypto.com、Bybit、OKXなど。UAE内の銀行送金が可能なところも多い。選ぶ基準は信頼性、安全性、資本金、実績、流動性、コストバランスの良さなどど。
③口座を開設
本人確認書類(IDなど)をオンラインで提出し、取引所で口座を作成。

④入金
銀行振込やクレジットカードで入金する。
⑤仮想通貨を購入
ビットコイン、イーサリアムなどの希望する仮想通貨を購入。
⑥管理方法を決める
●取引所ウォレット
→2で選んだ取引所を使った運用方法。短期売買や初心者向け。取引所に資産を預けるため手軽で便利だが、常時オンラインに接続しているため、ハッキングなどのリスクがある。
●独立ウォレット (MetaMask、Trust Walet、Ledger、Trezor、BitAddressなど)
→長期保有やセキュリティ重視向け。自分で秘密鍵を管理するため、比較的安全だが、自己責任が必要。また、独立ウォレットでも秘密鍵を管理するためにガジェットなどを使うコールドウォレット(オフライン) とアプリやブラウザだけで完結するホットウォレット(常時接続)がある(下記説明)。
⑦ウォレットに移動(必要な場合)
•独立ウォレットを選んだ場合、取引所から購入した仮想通貨をウォレットへ移動。
※注意点。少額から始め、価格変動リスクを理解する。セキュリティ対策を徹底(秘密鍵やパスワード管理など)
どちらを選ぶべき!? ホット or コールド

ホットウォレットとコールドウォレットは目的に応じて使い分けることで、安全かつ効率的に資産を管理できる。
●ホットウォレット:少額の資産を保管し、日常の取引や運用で利用。
●コールドウォレット:資産をオフラインで長期的、安全に保管。


ドバイの仮想通貨で気をつけるべきポイント。会計士が解説!
本誌コラムでもお馴染みのドバイ在住の会計士・岡本氏(Al Wasiq Management Consultants)。仮想通貨の会計や税務に関するポイントを解説してもらった。

1. 個人と法人の違い
【個人】
●ドバイでは個人所得税が存在しないため、仮想通貨の取引やキャピタルゲインに対する課税はありません。しかし、銀行のコンプライアンスが重要になります。例えば、大口送金(例:1億円相当のビットコインを換金した資金)をUAEの銀行口座に入金しようとした場合、「資金の出所」や「マネーロンダリングのリスク」を疑われる可能性があります。銀行側から取引履歴や証拠書類の提出を求められることが多いため、事前に準備が必要です。
【法人】
●UAEでは2023年6月から法人税が導入され、基本的な税率は9%。法人が仮想通貨を売却し、利益を得た場合、法人の収益として計上され、法人税の対象となります。法人で仮想通貨取引を行う場合、日本の法人税率(最大23.2%)よりは低いものの、取引管理や帳簿付けが厳密に求められます。
2. 銀行における二重チェックとコンプライアンス

ドバイでは仮想通貨を現金化して銀行に送金する際、以下のような「二重チェック」が働きます。
- 取引所のチェック
仮想通貨を取引所に送金・換金する際、取引所側が資金の出所について確認を行います。これは、AML(アンチマネーロンダリング)対策の一環です。 - 銀行のチェック
換金された資金が銀行口座に着金すると、銀行側は再び「資金の出所」や「送金の目的」について詳細な説明を求めることがあります。銀行に提出する書類としては、取引履歴や仮想通貨の購入経路、収益の証明が挙げられます。
3. 非居住者の定義と注意点

ドバイ移住を考えている人にとって、日本の「非居住者」要件を満たすことが税務上重要です。
【非居住者となるためのポイント】
- 住民票の抹消: 日本から住民票を抜き、法的に「海外居住者」となること。
- 1年以上の海外滞在: 実態として1年以上ドバイに居住していることが求められます。短期間(数週間)の一時帰国でも「居住者」と判断されるリスクがあるため、注意が必要です。実際ドバイに住んでいるかどうか(水道光熱費の利用状況、子どもの通学状況など)および就労の有無も判断材料となります。
4. 仮想通貨の税務上の計算
日本では、仮想通貨の取得価格の計算に「移動平均法」または「総平均法」が適用されます。例えば、過去に安値で購入したビットコインと新たに購入した高値のビットコインがある場合、両者の取得価格を平均化。そのため、部分的に売却しても「取得単価が低い部分を売った」とは見なされず、実際の利益より高く計算される場合があります。一方、ドバイではそうした心配は不要です。
5. 仮想通貨ETF:税務上の代替手段
仮想通貨そのものを保有せず、ETF(上場投資信託)を利用する方法があります。ビットコインETFは、ビットコインの値動きに連動する投資商品。仮想通貨を直接保有しないため、税務管理が比較的シンプルになります。株式として扱われるため、日本においても分離課税(最大税率20.315%)が適用され、仮想通貨の総合課税(最大55%)よりも税負担が軽くなる可能性があります。
6. 日本の税制動向と今後の注意点
日本では今後、仮想通貨に関する税制や規制が厳格化されることが見込まれています。ドバイにおける「仮想通貨の現金化」や「節税スキーム」は、適切に法令を順守しなければ後々大きなリスクとなります。近い将来、仮想通貨も「出国税」の報告義務対象になる可能性があり、出国時に1億円以上の資産を保有する場合、税金を払ってから出国するルールの適用が予想されます。




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