日本アラブ首長国連邦協会 西克司会長(後編)「UAEは脱炭素社会に突入しても重要なパートナーであり続ける」
Executive Dialogue Vol. 8 日本アラブ首長国連邦協会 西克司会長。Gates of Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。
操業開始から半世紀経過も原油は順調に採掘できている
永杉:アブダビ石油について、生産状況などをお聞かせください。
西:アブダビ石油の創業は1968年です。基本的にアブダビの原油採掘企業には、アブダビ国営石油会社(ADNOC)が過半数の出資をされていますが、アブダビ石油はコスモエネルギー開発の子会社で、日本企業が100%出資している企業です。採掘開始から50年を超えましたが、今も順調に生産を継続しています。井戸は原油を採掘すると、油量が減る、減衰という状況になりますが、その分、周辺の新しい井戸を掘って増産しながら、今日まで生産を継続しています。
永杉:原油が順調に採掘できる一方、世の中は脱炭素に向けた動きが加速しています。UAEも産油国ながら積極的に脱炭素後を見据えた取り組みを行っています。こうした動きをどう見ていますか。
西:脱炭素の未来は確実に訪れると思っています。ただし、それが2030年になるのか、2050年になるのかはわかりません。脱炭素社会を実現するためには、インフラを含めた環境の整備に加え飛躍的な技術革新が必要ですが、現状はまだ途上にあると思います。脱炭素社会への移行期間は、依然として石油、ガス等の化石燃料が主要エネルギーになるでしょう。日本国内には基本そのような天然資源がありませんから、我々のような企業がしっかりと操業してエネルギーを届ける必要があるのです。
永杉:脱炭素社会への変革は、段階的に行われるというわけですね。しばらくは化石燃料が主要エネルギーとのお話でしたが、今後はどのようになっていくのでしょうか。
西:まずは、化石燃料の中でもガスへの移行が予想されます。ガスは石油や石炭と比較するとクリーンな燃料です。また、ガスは水素エネルギーを作る原料としても使われます。製造の際に出てくるCO2を大気中に放出しないようCCS(地下貯留)などによって処理した水素は「ブルー水素」といって、ガスや通常の水素(グレー水素)よりクリーンなエネルギーとして注目されています。ただし、現在のところコストが高すぎるため実用化には課題があります。しかし、いずれにせよガスが次の主役になる可能性は高いと私は考えています。
脱炭素社会で日本が生きる道は強みの技術をさらに磨くこと
永杉:そうした変革を見据えて、日本の企業はUAEと今後どのように関わっていくべきと考えますか。
西:UAEはガスの増産も進めていますので、仮に石油からガスに移行しても密接な関係は続くはずです。また、日本としては技術革新を進めて、例えば「ブルー水素」のコストダウンなどを実現させ、技術的にUAEをバックアップすることなどが求められると思います。
仮にガスや水素以外のエネルギー、例えば太陽光やバイオマス、風力発電などが主要エネルギーになる場合でも、UAEとの関係は変わりなく続くはずです。なぜなら、UAEはこうした脱炭素分野についても、投資など積極的に展開しているからです。ですから、今後世界のエネルギー構成に大きな変革が起きたとしても、日本企業は今と変わらず、または今よりも活発にUAEとのビジネスの関係強化を図っていくのではないでしょうか。
永杉:UAEは産油国でありながら、国のトップが脱炭素後の社会を冷静に見つめている国です。石油だけに依存していないからこそ、さまざまなジャンルの日系企業にとってチャンスのある国だと改めて認識できました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
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