デジタルアートの最先端を体験できるARTE MUSEUM DUBAI。ドバイのアート市場とは？

Desert Icons Vol. 8 Dany Samaha（ダニー・サマハ／General Manager, ARTE MUSEUM DUBAI）。砂漠の都市からグローバルハブへの進化。ドバイの発展を牽引するキーパーソンに迫り、彼らの革新と成功の秘密を探求する。

五感で楽しむアートの旅。ドバイが魅せる没入型体験の最前線

--ドバイのアートマーケットでは、どのようなトレンドがありますか
　近年、アートを通じた没入型体験が人気を集めています。我々は、同分野を牽引するトップランナーであり、「永遠の自然」をテーマに人々がアートと自然のつながりを感じられる独自の展示をしています。自然と共生する重要性をアートを通じて伝えたいという思いがあります。

--展示では、どういった工夫がありますか
　視覚だけでなく、嗅覚や聴覚も刺激する工夫をしています。例えば、「オーシャン」では嵐の海をイメージし、波の音や海の匂いも再現、まるで船の中から海を眺めているかのような没入感を提供しています。展示内容は6ヵ月ごとに一部をアップデートし、リピーターを飽きさせないように改善しています。

--人気のある展示は
　最も人気があるのが、前述した「オーシャン」です。波の動きや嵐の雰囲気をリアルに再現しており、多くの来館者がこの展示を絶賛しています。ほかにも「ローズ」「滝」「ガーデン」などが好評です。これらの展示は来場者に驚きと感動を与え、SNSでも頻繁に話題に上がります。

--制作している企業について教えてください
　すべてのコンテンツは、韓国の「d’strict」が制作しています。彼らはクリエイターやデジタルアーティストのトッププロが集まり、繊細な作業を通じて最高品質の展示を作り上げています。最新作の「Life of UAE」の展示では、UAEの生活や伝統をテーマにしており、砂漠やアラビアテントの生活をリアルに再現しました。この制作には約4ヵ月を要しましたが、完成度は非常に高いです。

文化と未来をつなぐ。ドバイのアート市場が描く成長と挑戦

--ドバイのアート市場の成長率についてどう思いますか
　市場は安定した成長を見せていますが、競争も激化しています。多くの企業が参入を試みますが、長続きしないケースも少なくありません。その背景には、提供するコンテンツがこの地域の文化やニーズに合っていないからです。当ミュージアムでは、UAEの独自文化を反映させた展示を通じて独自の地位を確立してきました。UAEのニーズに合ったコンテンツ制作を心がけています。

--ドバイのアートの商業的価値はどのように考えていますか
　ドバイは100以上の国籍が共存するユニークな市場で、アートの商業的価値も多様性に根ざしています。我々は、UAEの生活や伝統をアートに変換することで、地元文化と観光客の双方にアピールしています。地域密着型の展示が、ドバイのアート市場の魅力を高めています。

--ミュージアムは世界中で展開していますか
　現在、当ミュージアムは韓国、ラスベガス、ドバイにあります。今後、ロサンゼルスとニューヨークにもオープン予定で、2026年までに20箇所以上をオープン予定です。これまで、累計700万人以上の来場者を迎え、その多くが口コミでさらなるファンを呼び込む形となっています。ブラジルやヨーロッパでの展開も予定し、グローバルな拡大を進行中です。

--なぜデジタルアートなのでしょうか
　デジタルアートは未来のアートです。その場を一変させる力があり、教育や文化に新たな可能性をもたらします。伝統的なアートに代わり、現代はデジタルアートが次世代表現としての地位を確立しつつあります。

--アートへの投資についてはどう思いますか
　今後さらに拡大すると考えています。制作には非常にコストがかかりますが、結果として、来場者に感動や幸福を提供できる価値があります。多くの企業や政府機関がこの分野への投資に注目し、UAEだけでなく中東全域でさらなる発展が期待されています。