在ドバイ日本国総領事館 今西淳総領事(後編)「民間の交流を活発化させることが日本のプレゼンス向上につながる」

Executive Dialogue Vol. 5 在ドバイ日本国総領事館 今西淳総領事。Gates of Dubai代表の永杉がUAE・日本の第一線で活躍するリーダーと対談し、ドバイをはじめとするUAEの実相に迫ります。

1968年埼玉県生まれ。93年上智大学法学部法律学科卒業後、外務省入省。2010年に国際連合日本政府代表部参事官、2013年に復興庁参事官、2017年に大臣官房儀典総括官、2022年には内閣官房副長官補付内閣参事官兼内閣官房新しい資本主義実現本部事務局参事官など要職を歴任する。また、2019年からは東北大学教授として教壇に立っている。2023年11月より現職。

中東・アフリカのハブとして年々機能が強化されるドバイ

※前編はこちら
永杉: 他の北部首長国の現状はいかがでしょうか。

今西: 他の首長国もさまざまな取り組みを進めています。例えばシャルジャ首長国は、2019年にUNESCOから「世界本の首都」として指定されています。文化・芸術・教育に大変力を入れている首長国で、スルタン首長の次女でシャルジャ芸術財団の総裁であるシェイハ・ホールは大変な知日派で日本語も堪能な方です。

また、シェイハ・ホールは国際ビエンナーレ協会(IBA)の総裁でもあり、キュレーターとしてもご活躍で、来年行われる国際芸術祭「あいち2025」の芸術監督に就任されています。UAEというと、ドバイやアブダビに注目が集まりますが、シャルジャにも日本の文化を理解してくれる土壌があることを、日本人にもっと知ってもらいたいです。

シェイハ・ラティーファ・ビント・ムハンマド・アール・マクトゥーム殿下(文化芸術庁長官)に表敬訪問

永杉: ドバイ進出を考える日系企業は年々増えています。進出を考えている企業へのアドバイスをお願いします。

今西: ハブ機能の一つとしてドバイでは世界最大あるいは中東・アフリカ地域最大規模の展示会が開催されています。例えば1月にはヘルスケア分野の見本市「アラブヘルス」、2月には食品総合見本市「ガルフード」など、ジャンルも多岐にわたります。総領事館はJETROやJNTOなどとも協力し、こうした日本の展示会参加企業への支援を行っています。中東やアフリカへの進出を検討している企業は、まずはドバイの展示会への出展を検討してみてはいかがでしょうか。

永杉: ドバイではどのような製品やサービスに需要があるとお考えですか。

今西: 例えば、日本産農水産物への注目度は極めて高いです。我々としても、日本食や日本の食材を広げていくために農林水産省が推進している農林水産物・食品輸出支援プラットフォームを活用し、輸出促進に力を入れています。他には、世界共通の喫緊の課題である脱炭素への取り組みでも日本の技術力が生かせると考えます。

永杉: 今後、両国がより関係を深めるために、どのような取り組みを行うべきと考えますか。

今西: 私は、国と国との関係は、人と人との交流によって、紡がれると考えています。二国間関係は総領事館の活動だけで成り立つものではありません。民間の交流もより進んでいくことが大切です。今年12月に3回目の開催となる、ドバイ及び北部UAE日本人会が主催する「ドバイ日本祭り」は、日本文化の発信に大きく貢献しています「Gates of Dubai」も両国の人々にそれぞれの文化を知るという意味において、重要な役割を担ってほしいと考えています。こうした動きの一つ一つの積み上げが、日本のプレゼンスを高めることにつながるのではないでしょうか。

永杉:「日本のプレゼンスを高める」という言葉は、「UAEをより良く理解してもらう」こととともに我々が本誌を発行するうえで念頭に置いている言葉です。今月から「Gates of Dubai」は月刊化となりますので、より細やかな情報をお伝えすることができるよう両国の相互理解に寄与したいと考えております。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

永杉豊。GATES MEDIA FZCO CEO、アラブ通信社代表取締役。学生時代に起業、米国永住権取得後、ロサンゼルス、上海、ヤンゴン、ドバイに移住し現地法人を設立。ミャンマー問題に精通した専門家として多数のテレビ番組に出演する。クーデター後のミャンマー困窮者と民主化支援のため2022年にNPO法人ミャンマー国際支援機構を安倍昭恵氏や逢沢一郎衆議院議員らとともに設立、代表理事に就任。2023年度社会貢献者表彰を受ける。主な著書に「ミャンマー危機」(扶桑社)。

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