ドバイビジネスの法律を弁護士が解説〜代理店トラブルと訴訟リスク、M&Aの罠とは?
Desert Icons Vol. 2 Mr. Christopher Gunson(クリストファー・ガンソン / AMERELLER Dubai Office(Law firm), Partner)。砂漠の都市からグローバルハブへの進化。ドバイの発展を牽引するキーパーソンに迫り、彼らの革新と成功の秘密を探求する。
海外ビジネスの落とし穴。代理店トラブルと訴訟リスクへの備え
--ドバイでのビジネスで気をつけないといけないことは?
留意すべき点は多岐に渡りますが、私たちが取り扱う日系企業の問題の約30%〜40%は、代理店に関連するものです。同様の問題はアラブ各地で発生しており、各国に「商事代理法」と呼ばれる法律が存在しますが、その内容も異なります。主な課題としては、現地の国民でなければ代理店として登録できないこと、また一度契約を結ぶと解約が困難であることが挙げられます。仮に、代理店の売上が3年以上なくて、別の代理店と契約を結びたい場合でも、まずは取消手続きを行わなければ、新しい代理店との契約も不可能です。
--日系企業の現地法人の社内問題はどのようなケースがありますか?
多文化のドバイでは、従業員の常識が同じであるとは限りません。セクハラやパワハラもあります。先進国ではそうした認識が統一されていても、一部の国ではまったく異なります。肝心なのは日々の従業員へのトレーニング。たとえ英語を話せる人種であっても、リテラシーが必ずしも共有されているわけではありませんので注意が必要です。
--ドバイに来る日本人が関係する件では、どのような訴訟が起きていますか?
ローカル企業に採用された日本人が口約束を信じてしまったという事例があります。雇用主の「私に任せておけば大丈夫」という言葉を信じ、しばらく勤めたものの、結局給与は未払いとなり、大使館経由で相談がありました。しかし、そもそもビザがないため、合法的に働いているとは認められず、訴えることもできません。このような損害を被る日本人の事例は少なくありません。
M&Aの罠とは? デューデリジェンスの重要性と投資リスク管理
--知的財産権の保護は守られていますか?
著作権、特許、商標の各分野でUAEは国際条約に加盟して、概ね国際基準を導入しています。特許に関して言えば、UAEでは製造業がほとんどないため、あまり活用されていないという印象です。しかし、著作権や商標については、実際の運用面でさまざまな問題が存在します。日系企業が10年前に登録した商標が現地企業によって勝手に再登録され、裁判を起こしたところ、日系企業の商標が十分に周知されていないという理由で日系企業側の登録が無効になった事例があります。
--M&Aについてはどうでしょうか?
中東地域の企業が売り込み上手である一方、実態は全然違うという事例が散見され、買収先候補のデューデリジェンスが非常に重要です。例えば、財務諸表を見る限り、買収先の会社の価値が100億円とされていても資産の所有権が明確ではなく、明らかなコンプライアンス違反も見られ、実際の価値に疑問を感じる案件は多いです。また、買収先候補の経営陣の説明によれば、工場の利用は99年間の賃貸契約で確約され、残存期間が20年間あるはずが、契約書を確認すると契約は更新されていなく、残り1年間しかなかったというケースもありました。
--医薬品・最新技術については?
最先端の医薬品や最新技術の安全性などの審査を受ける場合、現行の手続きは多少時間がかかりますが、アメリカやEUでの承認実績があれば、容易に認可が下りる傾向があります。もし、医薬品の許認可をMOHAP(厚生予防省)に申請したいのであれば、先にアメリカやEUで承認を取得するという方法が得策です。
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