ドバイ不動産市場最新トレンド

投資の街から暮らす街へ
ただ住むのではなく根を下ろす場所へ

いま、ドバイ不動産がかつてない注目を集めている。街には新築プロジェクトがひしめき、投資利回りの高さや税制の優遇も魅力。一方で、価格は意外にも割安だ。そんな投資主導の市場に、“暮らしの質”という価値観が芽吹いている。エリントンプロパティーズ共同創設者兼CEO、エリー・ナーマン氏に聞いた。


ドバイといえば多くの人が思い浮かべるのは、世界最高層のブルジュハリファなどの超高層が片側7車線の幹線道路シェイク・ザイード・ロードに沿って建ち並ぶ光景や、セレブたちが別荘として所有する波打ち際の邸宅エリアなどでしょう。しかし近年では、緑豊かな住宅コミュニティが増え、「開発が進むほどに砂漠に緑が増える」とも言われているような状況になってきています。不動産開発のこれまでとこれからの潮流について、教えてください。

2010年代のドバイは壮大なタワーや巨大モールによって、世界的な観光・ビジネス拠点としての地位を築きました。20年以降、ドバイの街づくりはそのような記念碑的建築から、生活の質、持続可能性やコミュニティ重視へと舵を切っています。この5年間で人間中心のデザインやウェルネス志向が主流となり、次の5年はスマートテクノロジーや持続可能性が軸に。都市の在り方そのものが変わり始めています。政府は33年までにGDP倍増などの成長目標を掲げていますが、ドバイはただ住む都市から、人生の拠点を築く場所へ進化しようとしているのです。

かつては政府系のデベロッパーが市場を主導していましたが、近年は海外企業や建設業者の参入が相次ぎ、開発がより活発になっているようです。空港や幹線道路沿いにも、各社の広告が目立つようになりました。

競争の激化は、市場の成熟を物語っています。イノベーションや品質への意識が高まり、不動産価値の底上げにつながっています。今後の国際空港の移転やメトロの延伸など、政府主導のインフラ整備が新たな宅地開発を後押しし、透明性の高い都市政策が、開発者の個性を活かした健全な共存を可能にしています。当社も規模ではなく、快適さとデザインの一貫性で勝負しています。

高級車やファッションブランドとのコラボ、プリツカー賞受賞の建築家が手掛ける物件など、ドバイでは目を引くプロジェクトが続々登場しています。どんな物件に人気が集まっていますか?

ダウンタウンやマリーナに多い高層タワーレジデンスや、パームジュメイラなどに代表される海に面したヴィラは依然として人気が高く、ブランドレジデンスもやはり人気です。一方でライフスタイルに着目し、暮らしのすべてがそこで完結するよう設計された、中小規模の「ブティック型コミュニティ」も注目を集めています。

以前は高級ホテルのようなラグジュアリー嗜好の空間が主流でしたが、昨今では自然素材を用いた落ち着いた色調や、サステナブル素材の採用が定番に。自然光や風をたっぷり取り入れる、開放的で効率的な間取りが支持されています。購入者の目も厳しくなり、広さだけでなく生活動線や共用施設のランニングコース、ヨガ・ピラティススペース、子どもの遊び場、ドッグランなどの質も重視されるように。住民同士が心地よく共存できる環境や、コミュニティの一員として長く暮らせる居住性が求められています。アートも重要なエッセンス。当社では「家はキャンバス」という理念のもと、芸術家や文化人と協働し、アートを暮らしに溶け込ませる取り組みも続けています。

注目すべきエリアは?

ドバイは都市構造の多様化が進み、既存エリアと新興地域の双方に成長の余地があります。おすすめエリアを3つ挙げるなら

●MBRシティ:ビジネスベイの南側で整備開発が進む高級住宅地。中心部で交通の便がよく、居住・投資の両面で人気。

●ドバイアイランズ:観光、レジャー、住宅が融合した、デイラ地区沖の新しいウォーターフロント。開発初期ながら期待大。

●ドバイサウス:2020ドバイ跡地にモールや住宅が整備される「EXPOシティ」などを含むエリアで、経済拠点として急成長中。国際空港の移転に伴うインフラ整備を見据えて、長期投資先としても注目を集める。

ドバイクリーク沿いのアルジャダフやブカドラも急速に発展中。カジノリゾート開発が話題の、ラッスルハイマ首長国も人気が高まっています。

ゴールデンビザによるメリットや、治安のよさ、国際色豊かな教育環境などから、日本人の長期移住も増えています。物件選びではどんなことに注意すればよいですか?

まずはコミュニティの環境。緑豊かで歩行者に優しい街並みか、公園など憩いの空間が整っているかといった要素が、暮らしの質を左右します。次に利便性。学校や医療機関、勤務先との距離、メトロ駅・主要道路へのアクセスは、重要な検討材料です。そして忘れてはならないのが、家を買う際のデベロッパーの信頼性。納期の確実性、建築品質、そして将来を見据えた開発姿勢があるかどうかをよく見極めましょう。住まいは単なる資産ではなく、人生そのものを形づくる体験です。

エリー・ナーマン

Elie Naaman

エリントンプロパティーズ共同創設者兼CEO

レバノン出身。中東地域の不動産業界で20年以上の経験を持ち、2014年にエリントンプロパティーズを創設。ホスピタリティ業界で培った経験をもとに、日常生活の質を高める思慮深い空間設計を重視している。

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