日本食材のその後。有事から2ヵ月〜サミット・大久保氏インタビュー<編集部コラム>

コールファッカン港には、大型トラックが列をなし、コンテナを待っている。ジュベルアリ港とは明らかに規模やオペレーションが劣るため、荷捌きにも限界が来ている


ホルムズ海峡の実質閉鎖により、UAEへの海上物流は依然として混乱の只中にある。代替港の逼迫、運賃の通常時10倍への高騰、在庫はわずか2ヵ月強(6月初旬まで)──。中東・UAEで日本食材卸とケータリングを手がけるサミット・トレーディングの大久保氏が見据えているのは、目先の利益率ではなく「日本食材から離れた現地シェフは、二度と戻らない」という、もう一つの危機である。(Gates Dubai編集長・武田)

サミットトレーディング代表取締役・大久保史朗氏。農林水産省から中東・アフリカ地域初の「日本食普及の親善大使」に任命されている

3月以降、ドバイのジュベルアリ港が使えなくなったため、現在はフジャイラとコールファッカン(UAE)及びジェッダ(サウジアラビア)を代替港として使用しており、実際、開戦後においても当該港を活用したコンテナ輸入を進めている。ただし、コールファッカン港自体も攻撃を受けて負傷者が出ており(現在は再開)、また港のキャパシティ制約に加え、貨物の混在および優先度の影響により、港内は逼迫した状況で貨物の滞留が常態化し、まだまだ安定したルートとは言いがたい。

戦時リスクチャージの影響により、一部の船会社・貨物会社では運賃が大幅に上昇している。特にコンテナ船の運賃は、通常時の約10倍まで高騰している。4月10日時点で、海上にはまだ数隻のコンテナ船が寄港を待って停泊し、一部はインドや中国に引き返し、日本に帰ってしまったケースもある。コンテナ自体も返却を求められるため、滞留が長引けば追加のコストが発生する。現状、同社の在庫は食材によっては約2ヵ月強分しかなく、ホルムズ海峡の封鎖がボトルネックとなっているのは火を見るよりも明らかな状況だ。

こうした中でも、同社はまだ値上げに踏み切っていない。競合他社が1〜2割の価格転嫁に動く中、利益率を圧縮してでも供給を継続している。その根底にあるのは「日本食材を使わない」という流れが一度できてしまえば、二度と元には戻らないという危機感だ。日本人シェフだけでなく、非日本人のシェフたちが日本食材から離れることの方が、長期的には「よほど怖い」と大久保氏は語る。

ホルムズ海峡が再開されれば、船主やオペレーション会社が船をこの海域に戻し、運賃も正常化に向かう。しかし、停戦合意後もホルムズは閉鎖されており、その見通しは立っていない。大久保氏にとって、ホルムズの動向は自社の命運を左右する最大の変数となっている。

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