湾岸4都市レポート。戦時下で浮かび上がった依存構造<編集部コラム>

空路が断たれた湾岸を車4台で走り抜けた前編に続き、後編ではサミットトレーディング大久保氏が、ドーハ・サウジ(リヤドなど)・アブダビ・ドバイ4都市の経済的打撃を「意外な順序」で語る。ミサイルが飛び交うアブダビより、標的になっていないはずのドバイの方が深く傷ついている——その逆説の背景にあるのは、コロナ禍と同じ構図だった。中東・UAEで日本食材卸とケータリングを手がける立場から見えた、日本の報道には映らない湾岸の輪郭を、ドバイ市内で聞いた。(Gates Dubai編集長・武田)
<前編 陸路10時間の越境レポート。有事下の湾岸を横断する>

攻撃されている都市が、最も傷ついているわけではない

大久保氏はアブダビ、ドバイ、ドーハ、サウジ(リヤドなど)の4都市を比較し、経済的な打撃の大きさは以下の順だと分析している。
影響が最も小さいのがサウジ。もともとアルコール提供がなく、ローカル客中心の市場であり、観光依存度が低いことから影響は限定的。次に影響が小さいのがドーハ(カタール)。同国は経済構造として観光依存が比較的低く、サッカー・ワールドカップ後に人が減っていたため、戦時の追加的な落ち込みは限定的。続いてアブダビで、最も影響が大きいのがドバイだ。
一見すると、ミサイルやドローン攻撃が多く飛び交うアブダビよりドバイの方がダメージが大きいのは意外に思えるが、ドバイは観光客と国際ビジネス客が経済の主力であり、それが消失したことの打撃は計り知れない。元々、アブダビは観光客の比率が低く、カンファレンスやF1などのイベントに支えられていた部分はあるが、ドバイほどの依存度ではなかった。

コロナ禍と同じ構図が、今また繰り返されている

コロナ禍でもドバイはいち早く開国して外国人を呼び込む必要があったのに対し、アブダビはドバイとの「国境」まで設けてコロナ対策を優先した歴史がある。その時と同じ構図となっている。
ただし、アブダビにとっての最大懸念は原油生産の継続と輸出ルートの確保だろう。国家歳入の主要部分を占める原油収入が大幅に減少しているはずで、その影響は中長期的に表れてくる可能性がある。
大久保氏の分析は、日本から報じられる「攻撃を受けているアブダビが危険」「ドバイは比較的安全」という単純な構図を静かに裏返す。実際に経済を動かしているのは、攻撃の有無ではなく、人の流れ。観光客と国際ビジネス客に支えられてきたドバイは、その人流が消えた瞬間、4都市の中で最も深い打撃を受けた。コロナ禍と同じ構図が、今また繰り返されている。

ミサイルとは異なる形の打撃が、ドバイを確実に蝕んでいる。その影響は即座には表面化しない。じわりと、しかし確実に、時間をかけて顕在化していくタイプの痛みである。ホテルや飲食業の現場はすでに厳しく、この状態が続けば、業界全体のグレートリセット——既存プレーヤーの淘汰と事業構造の再編——が起きる可能性すらある。そこには、日本のニュースが映し出さない湾岸の輪郭がある。




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